2024.05.31──ネオンの佃煮
今日はネオンの佃煮が食べたい気分で夜の町に繰り出してはみたが、最近の電飾はどこもかしこもLEDを使っているため、ネオンは中々見つからない。少し前なら都会の路地裏を歩くだけで、看板からいくつものネオンを集めることが出来たというに、人間にはネオンを食べてお腹いっぱいになりたいという欲求はないのだろうか。
LEDの眩しさに身を晒すこと一時間。目当てのものは見つからないまま、段々周りの騒ぎが大きくなってきた。遠くからパトカーの音も聞こえてきて、どうも長居が許される空気ではなさそうだ。最近はSNSが発達して俺のような存在の目撃情報もすぐに出回るから、随分と肩身の狭い世の中になったもんだ。こちとらお前らの寝ている夜の時間を選んで歩いてやってるというに。
おや、目の前にある店の電飾はLEDではない。あのボンヤリとした独特な明るさ、間違いない。この町にもネオンが残っていたか。あれが最後になるかもしれないが、食欲には変えられない。俺は看板から力付くでネオンライトを引きちぎると、スタコラと元来た道を走り出した。後ろから、ネオンを提供してくれた店の人間が怒鳴り声を上げている。元気なものだ。もしかしたら昔からの顔馴染みだったかもしれない。
家に帰ってネオンを煮詰める算段をする。貴重なネオンだ。不自然の恵みに感謝して、ありがたくいただくとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます