2024.12.29──窓明かりの星

 今日の夜空の星は、いつもよりも赤く、大きく、そして揺らいで見えた。

 不思議に思った私は、ベランダから埃をかぶった天体望遠鏡を持ってきて、それで夜空を眺めた。

 星はどれも同じ色、形をしていた。どれも橙色に輝いている。こんなことは未だかつてなかった。私は望遠鏡の倍率を上げて、一つの星をさらに詳しく観察した。

 そこで変化に気付いた。遥か、何光年も先にあるはずの星の輪郭が次第に鮮明になっていった。その星は球形をしていなかった。小惑星のように歪な形をしているわけでもなく、当然☆型をしてもいなかった。

 その星は、家だった。三角形の屋根をした一軒の家が、空中に浮いていた。星の輝きに見えた物は、その家の窓から漏れる部屋の明かりだった。それは電灯ではなく、ガス灯によって熾された赤々とした火の明かりだった。

 私は半ば呆然としながら、その家の窓を望遠鏡越しに見つめていた。すると、家の奥から、一人の女性が窓の方に歩いてきた。女性は窓から顔を出し、外の景色を眺めるように首を動かしていた。

 その時だった。望遠鏡を挟んで、女性の目と私の目とが合った。女性は驚愕の表情を浮かべ、窓から離れたと思うと、シャッと窓のカーテンを閉めた。

 途端、夜空に浮かぶ他の星々、いや、家々のカーテンが一斉に閉じ始めた。

 ものの数秒でそれは完了し、暗い夜空に星の輝きは一つも無くなった。

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