2024.04.27──蒐集始末人
我が妹の蒐集悪癖とは幼少期の頃からの長い付き合いだが、高校に上がった今年も変わらないとなるとそろそろ縁を切りたくなってくる。
俺は妹が出掛けている隙に妹の部屋に入り、奴があちこちから集めてきた有象無象のガラクタの整理を始める。長い時は2時間ほど掛かる仕事だが、妹が生まれた時より
ただ黙々と作業をしていると気が滅入るので、イヤホンでラジオを聴きながら少しでも心を癒す。だが流れてくるニュースはいずれも世の無情さを伝えるものばかりだ。終わらない戦争、上がる物価、下がる就職率……この悪しきは停滞して良きは変動する世界で、妹は何の面白味を覚えて物を拾ってくるのだろう?
今日は調子がよく(妹の調子が悪かったともいえる)、30分程で大体のものが片付いた。ほとんどがそのまま捨てるもので、出所が分かる重要そうなものは、後で元の場所に返しにいく。
厄介なものは重要そうかつ、出所が分からないものだ。本日のレシピは、何十個もある白く艶々とした石のようなものとなっております。綺麗に輝いて見えるが、その正体はまったく分からない。
捨てるものだとしても、石や土はそこら辺に気軽に廃棄するわけにはいかないので、実に始末に困る。今までも土嚢10袋分に及ぶ謎の土を拾われたことがあったが、家から数十キロ先のホームセンターにてなんとか引き取ってもらえた。
ふと、俺は手に取った二つの石の輪郭が、同じになっている部分を見付けた。試しに合わせてみると、それらの石は綺麗に繋がった。どうやらこれらの石は、一つだったものが割れてバラバラになったものらしい。
そうと分かれば俺の手は素早く動いた。ジグソーパズルのように、一個一個の石を綺麗に繋げていく。やがて最後の石を組み合わせると、目の前には男性の頭から肩に掛けた、大理石の彫像が姿を現した。
ここまでハッキリと形が分かれば、出所を探すのも苦労はしないだろう。俺は自分の仕事の出来に満足し、一旦休憩を取るため耳からイヤホンを外し、妹の部屋から出ていった。
部屋に放置したラジオが国立美術館の窃盗事件に関するニュースを流していたが、それを俺が知るのは数時間後のことだった。
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