2024.10.17──需要

 人里離れた深緑の森に暮らす爆弾の魔女は、今日も火薬の材料を調達に出かけるため玄関の扉を開けると、そこに一人の少女が倒れているのを見つけびっくり仰天。危うく帽子にファッションで付けているマーブル爆弾が炸裂するところでした。

 少女を抱えて家に戻り、フカフカのベッドの上に乗せると、少女の顔に何やら不思議なものを見つけました。少女は可愛らしい顔つきをしていますが、彼女の鼻の周りには三枚の「羽」のようなものがくっ付いていて、それがゆっくりクルクルと回っているのです。

 回転する羽に指を引っ掛けないよう気を付けながら、爆弾の魔女が少女の顔を拭いてあげると、少女は目を覚まし、鼻の羽の回転はより速くなり、一枚の小さな円盤のように見えました。

 最初は混乱していた少女でしたが、次第に状況を把握していき、爆弾の魔女にお礼と自己紹介をしました。彼女はプロペラの魔女といい、生まれながらの魔女ではなく、都市に棲む人間共の手によって作り出された人工魔女だと言うのです。

 その人間共の浅はかな謀のことは、爆弾の魔女も魔女づてに知っておりましたが、ここまではっきりと魔女としての形を作れるとは予想外だったため、爆弾の魔女は無性に腹が立ちました。

 プロペラの魔女になぜこんな森の奥に来たのかを尋ねると、自分は失敗作で、人間共に廃棄されそうになったところを逃げてきたと答えました。都市からここまではかなりの距離があるはずだと爆弾の魔女が疑問に思うと、プロペラの魔女は自分の魔法によってここまで来たと言います。

 プロペラの魔女の魔法とは、ものにプロペラを生やして、それを好きな時間だけ飛ばすことができるというものでした。この魔法を使って、彼女は自分自身を飛ばしてここまで来たのです。

 その話を聞いた爆弾の魔女は喜びました。自分の爆弾の魔法は威力はあるものの、遠距離の対象に当てるのは苦手だったため、彼女と協力すれば、自分のこの弱点を補えると考えました。

 爆弾の魔女はプロペラの魔女を自分の家に住まわせることにし、こうして二人の魔女の生活が始まりました。

 当面の生活費は、爆弾の魔女が作った爆弾を、プロペラの魔女が遠方に居る別の魔女に空送し、そのお代をいただくことで賄っています。

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