2024.08.31──スイカ雨
叔父が持ってきたあまり甘くないスイカを貪って水分補給とし、口に含んだ種をまとめて空に噴き出した。すると種の一つが入道雲に潜り込み、みるみるうちに根を張って、雲のてっぺんに新緑の若芽がぴょこと顔を出した。夏の水気と暖かさを孕んだ入道雲は滋養に富んでいると見え、芽はすくすくと順調に成長をしていった。やがて太い緑の枝を入道雲全体に伸ばし、ぷくりと小さなスイカが何個も実りだす。十数個ほどの脱落者を出しながら、スイカは丸々と太っていき、ついには立派な玉が均等に並べられた。入道雲が仄かに灰色がかると、近くの家々から人々が籠を持って飛び出し、その時を待つ。そして灰色の入道雲が空全体に広がると、バケツを返したような大雨が地上に降り注ぎ、それに交じって雲が育てたスイカも落下を始めた。人々は雨に打たれながらも籠をゆらゆらと振って、落ちてくるスイカを器用にキャッチする。あらかたのスイカが落ち切り、人々が戦利品を持ってほくほく顔で家に戻る頃、頭上にサッカーボール大の球体が見えた。それは最後に残ったスイカであった。落ちてきたスイカは私の手元にすっぽりと収まった。私はそれをブロック塀に叩きつけて割り、割れた欠片の赤い果肉を口にした。やはりあまり甘くはなかった。
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