2024.07.27──イチゴの目
部屋でイチゴを食べようとした時だ。
白い練乳のかかったイチゴにフォークを突き刺し、それをゆっくり口に運ぼうとしたところで、表面の練乳が垂れて、赤い果肉が露になった。
そしてその時、目があった。
思わずフォークを取りこぼし、フォークごとフローリングに落下したイチゴは、練乳と果汁を撒き散らしながら床を転がっていく。
イチゴが壁にぶつかって止まった時、ふたたび赤い果肉が目に留まった。
そしてまたしても目があった。今度は気のせいなんかではない。
イチゴの表面にプツプツと付いている小さな種。その種の部分が、すべて、小さな人間の目に置き換わっていたのだ。
悲鳴を上げながら、床のイチゴを踏み潰した。イチゴの赤い身は飛び散り、足を上げると、グチャリと真っ平らに潰れたイチゴが姿を表した。
潰れたイチゴの表面に付いているのは、ただのプツプツとした種であった。何の異常性も無い、蹂躙された食べ物がそこにあるだけだ。
途端に嫌な気分になった。自分は、一際の勘違いから、食べ物を疎かにするような真似をしたのではないかと。取り急ぎ、イチゴを踏んで汚れた靴下を選択に出すべく、足から脱がして、その底面を見た。
そこに貼り付いた何十個にもおよぶ微小な目玉が、一斉にこちらを睨み付けた。
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