2024.04.10──コズミック遺産分与
宇宙貴族マルヤ=イヨは、自分が死んだ後の星地の分配について頭を悩ませていた。
宇宙開拓時代の黎明期を支えたイヨ一族の支流であるマルヤは、自身も数百光年分の範囲を誇る星地を持つ有徳人だが、妻、愛人の間に何十人もの子供が居て、その子らに受け継がせる星地を生前の内に考える必要があった。
死後は、星地を遺族に均等に分配するのが一族の習わしである。それに加え、マルヤは自身が経営する銀河間貿易会社の信頼出来る者達にも星地を与えたいという考えがあり、一人一人均等に配ってしまうと、一人辺りが受け継ぐ星地はわずかなものとなってしまうのだ。
星地の一割は会社の為に使いたいと思っている。これを外すことは出来ない。また本妻の間に生まれた子達も十分な星地を与えたい。それを踏まえると、愛人との間に生まれた何名かの子らには、何も与えないという選択をしなければならなかった。
それは一族の習わしに背く行為だった。だからマルヤは、その子らを初めから居なかったこととするため、愛人に大金を握らせて、遠い外宇宙へと旅立たせた。
しかし、この時に追い払った子供の一人が、未開の星でゼロから国家を築き上げ、マルヤの所持していた星地を遥かに上回る領土を得ることを、マルヤは知らない。
そしてその子と、本妻の子らとの間の揉め事が、第二十七次宇宙争の切っ掛けになる頃には、マルヤは既にこの世に居ないのである。
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