2024.08.10──肉石

 年に数回、各都市で鉱石や化石を扱う即売会が開催され、私は学生の頃から度々そこへ足を運んでいる。

 昔はアルバイトも碌にしていなかったので買えるものは少なく、店頭に並べられた数々の鉱石類を眺めるに留めていたのだが、社会人になって数年が経ち、自由に使えるお金が増えたこともあって、今回のイベントではそれなりに散財している。

 即売会の会場に来てからそれなりの時間が経ち、ボチボチ撤収をしようかと考えていた時、ある店が目に留まった。その店ではBBQで使うような紙皿をテーブルに並べ、その上に商品である鉱石を乱雑に配置している。そして置かれている石が、なんというか、とても「肉」っぽいのだ。

 勿論そう見えるだけで、実際に触れてみればちゃんとした鉱石だと分かる。それも赤みがかった桃色をした、美しい石だ。確か私と同じように鉱石採集を趣味としている友人が、このような石を好んでいたな、と考えつつ、店構えの奇妙さも背中を押されて私はその石を一つ購入した。


 その日の晩、枕元に購入した石を並べてまじまじと観察していると、妙な考えに囚われてしまった。

 化石というものは生物の骨などの硬い部分が石化し残ったもので、その身を構成する筋肉や肌はタンパク質故に、何千何億年も先の未来には残されない。

 ただもし、肉体が新鮮な内になんらかの手段でそれを高質化、防腐化を施すことが出来たなら、ちょうどこの石のような、肉そのものが形になった化石として後世に残されるのではないだろうか。

 そのような妄想に更けてしまうのも、鉱石の持つ魅力なのかもしれない。私は石を収納ケースに仕舞い、布団に潜り込んだ。

 一瞬、鼻に何かが発酵するような臭いがしたような気がしたが、疲れもあり、私はそのまま眠りに就いた。

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