2024.04.16──捨て子拾い
惑沢菜里は高校から帰る途中の道で、段ボール箱に入れられた毛むくじゃらの物体を見つけた。
最初は捨て猫かと思ったが、近付いてみるとそんなものではないことが分かった。まず色がおかしい。鮮やかな艷のある紫の毛並みだ。身体は真ん丸で、首も尻尾も、手足すらない。そして身体の真ん中まで切れ込みが入るように大きな口を持ち、鼻はなく、目玉は五つもあった。
まあ、端的に言ってしまえば「バケモノ」なのだが、不思議と怖さも、気持ち悪さも菜里は感じなかった。それよりも、その生き物が入れられている段ボールに張られた紙、そこに書かれている文言が気にかかった。
『ほっといてください』
それを読むと、菜里は無性に腹が立ってきた。どこの誰がこの生き物を飼っていたかは知らないが、自分の都合でこの子を捨てておいて「放っておけ」とはどういう了見だ、飼い主を見つけ次第ぶん殴ってやろうか、そう思った。
だから、菜里はその生き物を持って帰ることにした。家はマンションだし親は生物嫌いだが、まあ家が一軒家だろうと親が生物好きだろうとこの子が見つかれば大騒動待ったなしだから何も変わらんだろう、と気楽に構えて。
しかし、胸に抱き抱えたその毛むくじゃらの生き物を匿うため、親とも、国とも、世界とも戦うことになるとは、今の菜里には知る由もなかった。
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