2024.04.17──車窓の世界から
電車の窓から見える景色は、人に考える時間を与える。次々と高速で移り変わる景色が脳に刺激を与え、いつもより深く物事を思案できる空間を提供してくれる。
それは遠き日の子供の頃の記憶だったり、直近の大人のくだらない悩みだったり、果てはまったくの空想であったりする。己の中で話題が尽きると、思考は視界の先の景色の方へ移る。あの家には誰が住んでいるのか、あの畑では何を育てているのか、あの建物はどういった目的で存在するのか。
駅が近付くと電車はスピードダウンし、目に映るものは景色よりも、駅で電車を待つ人々の方がメインとなっていく。考える話題もその人々へと変わる。あの坊やはどこへ出掛けるのだろう、あのお婆さんは普段どのように過ごしているのだろう。
人々を乗せると電車は発進し、主役は人から景色へと戻ってくる。目的地に着くまで、この役の変更は続いていく。
トンネルに入ると、景色は真っ暗になり、窓ガラスには自分の反射した顔が映る。束の間訪れる、自分と向き合う時間。トンネルが長いほど自分の顔を見ることになり、またその顔は自分のことを見つめてくる。
自分は今までどう過ごしてきたのか、これからはどう生きるのか。電車が目的地に着くまで、この思考の旅は続いていく。
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