2024.04.18──終末空港
水源を探して、かつて海のあった地域を探索していると、空港の跡地を発見した。
真っ平らで広大なアスファルトの滑走路は、もう何年も放置されているのであろう、所々がひび割れ、隙間から雑草が伸びている。それらが食べれる草かどうか調べようと近付くと、近くに思わぬ掘り出し物を見つけた。
それは滑走路同様、放置され荒れ放題となった、背の高い管制塔だった。窓はほとんど割れていて、地面から頂上まで蔓植物で覆われている。だが、外壁に損傷らしきものは見当たらない。
これは便利なものを見つけた。雨風を防げるだけではなく、外側の植物を落としてしまえば、地上を歩く猛獣や暴徒が侵入してくるのを防ぐことが出来る、格好の住処になる。しばらくはここを拠点に、辺りで物資を集めるのもいいかもしれない。
私はさっそく管制塔を整備し、そこに居を構えることにした。滑走路に生えている植物も毒性のものは少なく、食用にも薬用にも使えそうだった。
そうして管制塔で暮らし始めて一週間が経った、ある日の夜のことだった。
とつぜん、空気を揺らすような重低音を耳にして、寝ていた私は目を覚ました。暴徒の集団が我が家に押し寄せてきたのかと身構えたが、窓の外を見て、あり得ないものが視界に映った。
飛行機だ。
旅客機だ。
白い、大きなジェット機が、ライトで夜の闇を引き裂きながら、今まさに滑走路に着陸しようとしているのだ。
私はそれを、すでに無いも等しい政府が救援物資を積んで送り込んだものだと考えた。飛行機が滑走路に降り立ち、完全に停止したのを確認すると、私は興奮を押さえきれずに管制塔から飛び出した。
だが、私が滑走路に出たとき、あれ程の存在感を放っていた巨大な飛行機は、影も形もなかった。
その「飛行機の幽霊」は、それからも度々着陸してきた。それはこの場所に憑いたものなのか、それとも私の頭が見せる幻覚なのか、今でも答えは出せていない。
だが、生き続ける理由が分からなくなった時なんかにその飛行機のエンジン音を聴くと、もはや恒常的となった孤独感が、いくらか和らぐような気がするのだ。
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