2024.11.07──食べかけのギフト⑦

「……セツさん、今のは?」

 清戯の姿が見えなくなってから、磯辺が節に尋ねた。

「私立探偵よ……厄介なね」節が大きくため息を吐く。「三大欲求よりも事件に興奮する変態で、面白い(清戯比)事件の臭いを嗅ぎ取ったら、既に警察が捜査中だろうとお構いなしに首を突っ込んでくる奴よ。公務執行妨害で何度しょっぴいてやろうと思ったことか……」

 親指を眉間に当てながらそう言う節に、磯辺がさらに聞く。

「あの……お二人はご友人なのですか?」

「あいつと!? んなわけないでしょ!!」

 節の猛烈な否定に「す、すいません!」と磯辺がたじろいだ。

「……ただの商売敵ってだけ。無駄に付き合いが長いだけのね。今日もどういう因果かこんな田舎で鉢合っちゃうし……」

「……捜査の邪魔になりそうであれば、追い出しますか?」

 磯辺は気を遣ってそのような提案をしたが、節は「いや」と意外な返答をした。

「忌まわしいけど、あいつの探偵としての実力は本物よ。それに、私たちが知らない情報も既に持っているみたいだし……このままほっときましょう」

「いいんですか?」

「私が早く帰るためよ」

 節がそう言って苦笑した。

「ぶっちゃけたこと言うけどね……私が解決したって言われている事件の半分は、実はあいつの手柄なのよ」

「マジですか!?」

「………………いややっぱ二割くらいかな」

「なんですかその間は」

「とにかく! 奴のことは奴に任せるとして、私たちのやることをやるわよ」

 節がそう言ってズンズンと先行していき、磯辺が慌ててその後を追った。

 二人の行く先は、朝木氏の自宅である。

「ところで、あの探偵の隣でベース弾いてた娘は誰です?」

「よく知らない。ある時期から毎回あいつとペアで見るようになったけど……」

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