2024.06.11──魔を退ける者⑪
「最初は
俺が話し掛けると、あいつも殊の外驚いた。お互い中学以来一度も面を合わせてなかったんだからな。
少し落ち着くと酒井は俺に、別れてからの10年で起きたことのほとんどを話してきた。すごい早口で、油断すると聞き逃しそうなくらい、必死に喋り続けていた。先にも言ったが、俺と酒井は格別な間柄というわけでもなく、友人としてもそこまで深い関係じゃなかった。だけど、あいつは自分の心内を明かせる相手をずっと求めていて、そこに偶々俺が現れたんだな」
梨本の話の途中で、
「それから定期的に、俺は酒井と会うようになった」梨本は依然カップには触れずに話を進める。「あいつの事情は再開したその日に大方聞いていたから、その後会って交わす言葉はただの世間話だった。家のこととか、仕事のこととか、子供の頃の思い出とか……そんな他愛のない話を続ける内に、俺はいつの間にか、あいつのことを愛しく思うようになっていた。
あいつもそう思ってくれてたのか、それとも唯一の話し相手としかみてなかったのか、今となっちゃ分からんが……俺と酒井は、正式に交際を始めることにした。半年前のことだ」
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