2024.08.04──在宅勤務
仕事をするためにPCを立ち上げたところ、デスクトップに異様な光景が広がっていた。
画面上に映る全てのアイコンが、南京錠の形に変化していたのだ。
フォルダを開き、中身のデータを確認したところ、いずれのアプリもファイルも、南京錠のアイコンに変わっている。そしていずれのファイルにもパスワードが設定されており、開くことが出来ない。
自宅でも職場でも使用している(セキュリティの観点からはよろしくないが)パスワードを打ってもファイルは開かない。どれもこれも、自分の知らない暗号が設定されているらしい。いったい誰がこんな真似をしたのだ? PCは職場から持ち帰り、ずっと自室に置いていたのに……。
そう思いながら部屋の中に視線を移すと、壁に一枚の紙が貼り付けられていた。そこには英数字を合わせた8文字の文言が記されている。はて、こんなものを壁に貼った記憶は無い。私はふと思い立ち、その文字をロックの掛けられたファイルのパスワード欄に入力した。
ファイルは開かれた。どうやら壁に貼られた文字がパスワードだったらしい。しかし安心するのも束の間、そのパスワードを別のファイルに入力したところ、それを開くことは叶わなかった。
再び途方に暮れて天井を見上げたところ、そこにも別の紙が貼られ、別の文字が記されていた。それを先程開かなかったファイルに打ち込むと、それを開くことができた。
訳が分からないが、PCに保存されているファイルのパスワードが、部屋の至る所に紙に記す形で隠されているようだ。今現在開けたファイルは、たったの二つ。これでは仕事にならない。仕事を開始するには、全てのファイル分のパスワードを部屋の中から見つけなくてはならないらしい。
何者が仕掛けたことかは分からないが、こんなことで折れる私ではない。私はその挑戦に乗ってやり、部屋中をひっくり返してパスワード探しを始めるのだった。
二階の方でゴトゴトンと物音がしたのを耳にし、蓮羽密子はニコリと微笑んだ。
夫が仕事に熱心なのはありがたいことだが、それで毎週毎週部屋の掃除をサボられるのはどうにも困りものだ。今回の件で家具の裏に溜まる埃が少しでも取れることを願い、密子はホットコーヒーを口に含んだ。
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