2024.09.23──星の漁師

 ようやく訪れた秋の涼やかな夜風にその身を晒しながら、俺はただ暗い夜空の星々を眺めていた。手には大きな投網を持ち、俺の周りには何人もの同業者が居る。

 刹那、夜空に一筋の光が走る。その一瞬を見定め、俺は網を空に投げうった。仲間の漁師も皆、次々に網を放っていく。

 俺が投げた網はふわりと地面に落下し、俺はそれを手繰り寄せて、中身を確認した。

 青白い光を放つ、立派な流星が掛かってくれていた。

 俺たちは星の漁師。星を獲り、それを売って生計を立てる。


 馴染みの居酒屋にて、大根味噌をつまみに安酒をちびちび飲んでいる俺は、頭上に置かれたテレビの番組に注目する。

 そこでは「星料理」なるものが都会人の間でブームになっていることを告げていた。栄養満点で、味も良く、見栄え最高な食材、「星」を用いた料理。

 その星を卸しているのが俺達漁師だ。俺たちが獲った星はすぐに星類加工場に搬送され、分割と殺菌が行われると、日本各地へと売りに出されていく。俺が獲った星が巡り巡ってこのようにテレビで取沙汰にされていることに、俺はあまり良い気分ではない。

 獲った星を人々に食べてほしいという気持ちはある。しかしそれは、食べるものに困っている人々に対してだ。栄養価の高い星は、一つ網に掛かれば100人の飢えをしのげると言われている。そういったものを、都会に住む恵まれた人間が一時のグルメのために消費してしまう流れは、一体いつ出来てしまったのだろう。

 そして、これは漁師仲間の間でしか知られていないことだが、星がなぜ栄養豊富な食材になり得るか、その事実を知れば、どんな者でももう少し有難みをもって食してくれるだろうに。

 星そのものは岩や土に無機物に過ぎない。大事なのは、その無機物の表層に存在する、多種多様の有機的な……。

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