2024.11.14──食べかけのギフト⑭

 節と清戯たちは個人営業の居酒屋に入り、二階の個室が(と言うよりは店全体がだが)空いていたため、そちらに腰を落ち着かせた。

 年期の入ったメニュー表を持ち、清戯が指を口に当てながらんん~とわざとらしく唸った。

「俺はウイスキーのロックかな。せっちゃんは?」

「飲まないわよ。明日も捜査があるんだから」

 そう言うと磯辺が露骨にがっかりした顔をしたため、節は肘で思い切り小突いてやった。

 四人分の食べ物と飲み物(酒1ソフトドリンク3)が運ばれ、しばらく各々黙って食事を続けていたが、烏龍茶を飲み干した節が口火を切った。

「それで、果物の正体は結局分からず仕舞いなの?」

「さっぱりだね」ウイスキーのグラスをテーブルに置いて、清戯が肩をすくめた。「その道のプロを訪ねて回ったがまったくの収穫なしさ。果物の謎は深まるばかりだよ、ふふ」

「なんで嬉しそうなのよ……」

「果物はさっぱりだったが、気になる情報を二つほど耳にしたよ」

 それを聞いた節は「ほう」と言って少し前のめりになった。

「まず、朝木氏が件の秘密のハウスを建造する前。氏はちょくちょく、果之浦町の外に出かけていたそうだ」

「外に出かけるのは普通のことじゃないんですか?」

 そう口を挟んだ磯辺に「それまで氏は町をほとんど出たことがないらしい」と清戯が付け加えた。

「朝木氏が誰かと会って取引をしていた、いや、取引の準備をしていたってこと?」

 節がそう言うと、清戯は首を振った。

「そこまでは断定できない。まだ氏が誰と会っていたのか、どこに行っていたのかも不明だ」

 ただし、と清戯は指を一本立てた。

「ここでもう一つの情報が役に立つかもしれない……それは、朝木氏の農場で、かつて解雇された従業員の情報だ」

 解雇? と眉をひそめる節に清戯が続ける。

「重要なのはこの従業員が働いていた時期、そして解雇された時期だ。聞いた話によると、彼が働いていたのは朝木氏があのハウスを作る直前までで、ハウスが建てられてすぐ、農場を追い出されたそうだ」

 その情報には節も目を光らせた。

「じゃあその従業員を見つけ出して話を聞ければ……!」

「朝木氏のハウスの秘密……そして果物の秘密が明らかになるかもしれない」

 清戯は再びウイスキーのグラスを手に取り、気取った所作で口を付けた。

「……さて、こちらの成果はそんなところだ。そっちはどうかな?」

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