2024.12.12──選別工場
悪魔の宮殿の床には白黒チェック柄の絨毯が敷かれている。
まるで広いチェス盤のようなこの絨毯には罠がある。所々が模様の四角の形に切り抜かれていて、その部分は地獄へと続く深い落とし穴となっているのだ。
だから宮殿への来場者は足元に神経を注いで歩かなくてはならない。穴は黒色だから、白色の部分だけを歩けばいいと考える人もいるかもしれないが、悪魔は抜かりない。一見無事に見える白地の四角も、いくつかのものは三辺に切り込みが入れられていて、そこを踏み抜けば地獄へ真っ逆さまという罠を用意している。
悪魔の宮殿は広大な一間で中に壁は無いが、絨毯のそこかしこに穴が開いているため、実際には通れる場所は限られている。その見えない、触れられない壁によって、宮殿の中は仕切られているのだ。
毎日、百人余りの来場者が宮殿に訪れる。この者たちは最終審判に来た者たちだ。全員天国には行けない悪人の集まりだが、即地獄に落とすには、各々の抱える事情がそれを遮る。
そんな者たちの行く末を最後に決めるのは「運」だ。運良く宮殿の最奥、悪魔が腰かける玉座まで辿り着いた者のみが天国に送られる。それ以外の者は穴に足を滑らせ、地獄へ向かうのだ。
今日も下界で何名もの悪人が命を落とし、その内の何名かが、悪魔の宮殿への入場券を手にする。そしてその内の何名かが己の前に現れるのを、玉座に座る悪魔は手を揉みながら待ち続ける。
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