2024.12.13──ドライドライブ

 阿津舌介里が無間砂漠を走行中、干物兵器が落ちているのを発見した。

 干上がってからあまり時が経っていないのか、欠損部は見当たらず色彩も損なわれていない。水を掛けて戻せば、十全な性能を発揮してくれることだろう。

 しかし、もうここ数百年は戦争も無く、さらに人類の数さえ極少で小競り合いすら発生しない。そんな時代に貴重な水を使って起動する兵器など無用の長物だ。

 だが、誰にも必要とされず打ち捨てられた干物兵器を見ていると、何やら哀れな気持ちになり、結局介里は干物兵器を乗ってきた半自動車に無理やり括り付け、持ち帰ることにした。水分のない干物兵器は軽量だが、それでも走行速度は半減し、拠点に戻った時にはすっかり日が暮れていた。

 介里が乾燥木材に火を焚くと、拠点にしている洞穴の内部がすっかり照らされた。ここには介里が今まで拾ってきた有用無用のものがごちゃごちゃと置いてあるが、今日そこに新たな無用が加わる形になった。

 拠点最奥部に厳重に保管している貯水タンクを覗き、介里は苦笑した。そこの水で干物兵器を復活させると、ほんの一日分の飲み水しか残らないのだ。

 まあ、その一杯の水を飲みながら新しい水を補充すればいいと独り言ち、介里はバケツ一杯に水を入れ、それを干物兵器にかけてやった。

 水を吸った干物兵器はすぐに起動し、ペラペラになった頭部、胴、手足が瞬く間に膨らみ、狭い拠点の中に悠然とそのボディを広げた。焚火の赤い明かりが、金属光沢のあるその身を照らした。

 介里は素直に綺麗だと思った。一方で起動された兵器は、自分はどうしてここに居るのだろうといった風情で、その丸い頭部をキョロキョロと動かしている。

 介里は乾燥チーズを半分に千切り、あんたもどうだいと兵器に手渡した。

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