2024.12.14──時の輪

 近所でやっているフリーマーケットに顔を出したら、ガラスの破片のようなものを並べて売っている店を見つけた。

 最初は売り物の瓶でも割れてしまったのかと思ったが、近くで見るといずれのガラスも虹色の光沢を持ち、ものによっては土や砂のようなものがこびり付いていて、店主の説明を聞くと、これは古代に使われていたガラス食器の破片とのことで、長年土中に埋まっていたことでこのような見た目になったのだそうだ。

 その話を聞いて俄然興味が沸いたが、いざ値段を見てみると、フリーマーケットにすれば中々のものだ(フリーマーケットゆえかもしれないが)。気になったものを手にとっては値札を見て渋るという作業を続けていると、ふと、変わった形のガラスが目に付いた。

 それはリング状をしており、色は薄緑で他のガラスと比べるとあまり光沢はない。おそらく、器の底の部分が外れたところだろうと店主は説明し、見た目もそこまで綺麗じゃないから値札の半額でいいと言った。上手い具合に乗せられた気がしないでもないが、私はそのリング状のガラスを購入した。

 小さな紙袋に入れてもらったものの、鞄も持たず(財布とスマホはズボンのポケットにin)に出たものだから、それを持ちながら道中を歩くことになる。それも別に構わなかったが、私はあるアイデアが浮かんだ。

 袋から取り出した古代ガラスのリングを、私は親指にはめ込んだ。リングの径は大きくて親指でもグラグラだったが、私は気にせずガラスと共に会場を練り歩いた。

 ガラスのザラザラとした質感に古代の景色を妄想しながら、私は現代の冬の冷たい風を頬に受けた。

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