2024.01.28──下山マシン

 ついに新発明の飛行機が完成したのは航空レース当日の朝であり、会場まで試運転も兼ねてこのマシンで飛んでいこう! と考えた私が浅はかだった。

 マシンは飛び出しこそ良かったが、10kmも進まぬ内に出力が落ち、近くの山に墜落してしまった。幸い寸前で脱出装置を作動したため私は怪我無く地面に着地できたのだが、マシンは岩石の露出した山肌に叩きつけられ、見るも無惨な最期を向かえた。

 もはや大会どころではないが、私は壊れたマシンに近付き、墜落の原因を探った。なんともつまらない理由だった。マシン制作に夢中になる余り、燃料を十分に容れるのを怠っていたのだ。

 さて、こうなる泣く泣く家に帰るしかないのだが、家までの距離は直線で10km。ここは山だから当然直線移動など出来ない。そして山を上る準備もしていないわけだから、このまま徒歩で帰るのは無謀である。

 となると、安全に帰る「足」を作らなければならない。幸いここには新鮮な鉄屑と、豊富な木材と、優秀な頭がある。

 それらを駆使した結果、「陸上型手漕ぎ筏マシン」が完成した。丸太を繋げて車体を作り、大きな歯車に木の皮を巻いてタイヤを作り、それらを組み合わせた台車のようなものを、二本の木の棒で地面を漕ぎながら進んでいくのだ……燃料の無い現状で作れるのはこれが精一杯だ。

 すっかり日の暮れた山の中を、私は筏をガラガラと漕ぎながら進んでいくのだった。

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