2024.12.05──檻の雨

 3XXX年。人類種は地球生息物連合(地生連)の決定により、種の半永久的な懲役刑が決定された。

 決定が成されてすぐ、地生連は地球の大気をコントールし、世界中に「檻の雨」を降らせた。これは鋼のような硬度の長い雨が恒久的に地上に降り注ぐもので、罰則対象外の生物はこの雨を容易くすり抜けることが出来るが、罰則対象の生物は周囲を雨に取り囲まれ、一生一切の身動きが取れなくなるという、自然兵器である。

 地生連のこの処分を受け、人類種は地生連からの脱退を表明。人類種として独自の歩みを進めていくことを宣言した。

 人類種の目下の悩みは檻の雨であった。これが降り続く限り、大胆な動きをすること叶わない。人類種は様々な方法を試し、現状一番効果的な方法を編み出した。それが「刃貝」の品種改良である。

 刃貝とは二枚貝で、その名の通り、合わさった二つの貝殻の結合部が剣のように研ぎ澄まされており、これを人類種が持って振るうと、檻の雨を切断することが出来るという代物だ。もちろん、このような生物が自然に居たわけではなく、人類種以外の生物が檻の雨をすり抜けられる所に目を付け、二枚貝を対檻の雨用に品種改良したのだ。

 刃貝を使うことで、人類種は檻の雨の呪縛から抜け出しつつあった。この報告はすぐに地生連にもたらされ、地生連は急場しのぎで貝類種も檻の雨の罰則対象に加える決定をした。当然、貝類種はこれに猛反発。紆余曲折の末、貝類種も地生連を脱退する羽目になってしまった。

 人類種は貝類種に共に手を組むよう声を掛けたが、貝類種はこれを無視。こうして、3XXX年の地球の勢力図は、地生連、人類種、貝類種の三竦みの状態となった。

 檻の雨は依然降り注ぎ、分断された土地で人類種と貝類種は事態打開の方策を各々で考え続けている。

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