2024.12.04──ベルコン式

 俺の仕事は、席に座りながらベルトコンベアに流れてくる依頼をこなしてくというもので、知識と技術さえ覚えれば、これ以上に楽な仕事はないだろう……ベルコンに流れてくる依頼が少ないのであれば。

 一日の仕事量は朝の内に決定するので、俺の席の前を流れるベルコンの速度が速いか遅いかで知ることが出来る。今日は取り分け速い。めっちゃ速い。寝不足気味で頭も手先も鈍くなっている俺は、果たしてこのスピードに付いていけるのだろうか。

 いや、出来る出来ないじゃなく、やらないといけないのだ。俺は覚悟を決めて席に座り、高速で流れるベルコンを注視した。そしてついに依頼達が行列を成して流れかかってきた。これが回転寿司ならばさぞ満足のいく質量だが、仕事は俺の腹を満たさずどんどん減らす一方である。

 ベルコンを動かすローラーが激しい駆動音を立てる。増水した川のようにベルコンが進む。依頼が押し寄せる。俺は十全とはいえない頭と手を必死に働かせ、ベルコンから一つひとつ依頼を回収する。

 いつもは12時には食える昼飯が、14時になってしまった。束の間俺は席を立ち、休憩スペースで弁当を食べ、スマホをいじり、本を読んで数分ほど眠る。

 一時間の休憩が終わり席に座った俺の目の前に、ベルコンは一時間分の溜まった依頼をぶちかました。なんで一時間目を離しただけでこんな依頼が溜まってるんだよ! と誰彼構わず怒鳴り散らしたくなるが、今日の当直は俺一人だということを思い出し、泣く泣くベルコンとの戦いを再開する。

 終業時間まで必死に手を動かした結果、大体は片付けられたものの、数個はベルコンから拾い上げることが出来ず、ベルコンの終点脇のレールに流され、そこで小山になってしまった。

 明日の仕事はこの小山から片付けることになるのだが、明日のベルコンは今日ほどの速度じゃないことを祈り、俺は職場の電源を落とした。

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