2024.07.20──異能検挙⑥
地上に戻った鳥林達を、地上待機組の警吏達が出迎えた。
その中の一人である六枷が駆け寄り、鳥林の手を取る。
「お見事でした、鳥林さん」
称賛する六枷に、鳥林が驚いた顔をする。
「まだ何も言ってないが、分かるのかい?」
「ええ、みんなに聞きましたから」
そう言って六枷は虚空で人差し指をクルクルと回した。
鳥林がアジトで戦っている間、微生物から話を聞いて常に状況を確認していたようだ。
これは本当に心強い味方を得た、と鳥林は微笑んだ。
「今回の検挙は六枷くん、キミの手柄だ。キミの異能が無ければ我々はあと十年掛けてもこいつらの棲家を洗えなかっただろう」
鳥林は後ろを見やる。そこには鳥林の血で作られた檻に囚われた德馬が俯いている。もう先程の鬼のような姿ではなく、人の姿に戻っている。
「『新世代』以外にも異能犯罪の組織はまだまだある。苦労も多くなっていくだろうが、これからもキミの力を是非貸してほしい」
「はい。鳥林さんのお力も頼りにしております」
二人がそのような会話を交わしていると、一人の警吏が鳥林の近くまで走り寄った。
「第八班が苦戦してる? 厄介な異能者が居ると……分かった、すぐ行く」
鳥林は六枷に向き直る。
「六枷くん、悪いがここはキミ達に預ける。無力化はしたが、德馬から目を離さないでくれ」
「分かりました。鳥林さんもお気をつけて」
鳥林は警吏達を連れて別の班の元へ急ぎ向かった。後には六枷と、檻に囚われた德馬だけが残された。
「…………なぁ。おい」
ずっと黙っていた德馬が顔を上げ、六枷に話しかけた。
六枷は何も答えなかったが、德馬は言葉を続ける。
「お前、六枷とかいったな? 知ってるぜ……その名前」
六枷が振り向いた。
「取引をしようぜ」
德馬がニタリとほくそ笑む。
「俺はお前が知りたがっている情報を持っている。ここを出してくれりゃあ、それを提供してやろう……知りたいはずだろう? お前の両親のこと
「結構」
六枷は檻に顔を寄せ、真顔で答えた。
「お前達のアジトを見つけられる異能を持った人間が、自分の両親の居場所を知らないとでも?」
呆気に取られる德馬から顔を離し、六枷はニッコリと笑った。
「貴方も健康に気を付けることですね」
「は……おい、そりゃどういう……」
六枷はそれ以上は何も言わなかった。その後、全てのアジトを鎮めた鳥林と共に異能対策課の課長に報告し、前代未聞の異能犯罪組織の検挙は達成されたのである。
『新世代』のリーダー、德馬のその後だが、勾留された留置所の中で突如謎の病に発症。わずか数日後に命を落とした。
身体の中の特定の細菌が急速に増殖したためとのことだが、その原因は定かではない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます