2024.01.21──とんでる
仕事が煮詰まり、気分転換に近くの公園へ散歩に行くと、広場の真ん中でピョンピョン跳ねている少年が居た。
近くに保護者や友達の姿もなく、小学生低学年くらいの男の子がたった一人で、空を見上げながらジャンプをしているのだ。
少年の顔は真剣で、遊びでやっているようには見えない。興味を引かれた私は、少年に話し掛けてみた。
「何をやってるんだい?」
「とんでる」
ものすごく簡潔な答えが反ってきたため私は面食らってしまった。
「どうして跳んでいるんだい?」
やはりただ遊んでいるだけなのかもと思いながら私は質問を続けた。
しかし、その質問に対する少年の答えは予想外のものだった。
「とんでる」
少年は再びそう言った。それを聞いて私はふと思った。
少年は初めから私の質問など聴いてはいないのではないか? さっきから顔をずっと空に向けたままだし、ジャンプを止めようともしない。
では、「とんでる」とはどういうことか。
それは、自身が跳んでいると答えたのではなく、少年が見ている空を何かが「飛んでる」と言っているのではないだろうか?
そう考えるや否や、私も少年と同じように空を見上げた。
仕事が煮詰まり、気分転換に近くの公園へ散歩に行くと、広場の真ん中でピョンピョン跳ねている中年男性が居た。
近くに子供の姿はなく、誰かの保護者とも思えない妙齢の男性が、たった一人で空を見上げてジャンプをしているのだ。
平日の昼間にこれは異様だ。私は警戒しながら、男性に話し掛けた。
「何をしているのですか?」
「とんでる」
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