2024.02.19──タイルコレクター
来たことのない町に着くと、まず初めに足元を見てみる。
そこがアスファルトで舗装された道ならハズレで、石畳なら吉、タイル張りなら大当たりだ。
わたしはタイルの道を見つけると、どこか破損している場所はないか探しながら歩く。歩道をタイルで舗装した町というのは大抵古い町であり、道の整備が追っ付いていないパターンがほとんどだ。
首尾よく道が壊れた場所を見つけると、わたしは崩れたタイルの1ピースを拾って、鞄の中にしまう。わたしはこうやって、色々な町のタイルを集めている。
仕事に使うとか、何かの調査のためということではなく、ただの趣味でやっている。正直、曲がりなりにも公共物の破片を持って帰っていいのか疑問に思う時もあるが、世の中には使い終わったマンホールの蓋だとか、古い信号機だとかを集めている人達も居るので、タイルの1ピース程度なら許されると思う。ああいう人達はどういう伝手であんなものを手に入れるのだろう?
家に帰ると、わたしは鞄から今日拾ったタイルを取りだし、コレクションブックに仕舞う。本来は化石や鉱石などを飾る用の本で、今まで集めた百数個にもおよぶ様々な色、形のタイルが並んでいる。これを眺めてニヤニヤと変な笑みを浮かべるのがコレクターとしての何よりの幸せだ。
わたしは新しく仕舞ったタイルの下に今日の日付と訪れた町の名前を書き込むと、コレクションブックを畳んだ。最近は都市化が進む、ほとんどの町はアスファルトで舗装された道路になっている。しかしそれは世の流れ、特に悲しみがあるわけでもない。選択肢が狭まれば、その狭い道に無理やり身体を押し込んででも進むのがコレクターなのだから。
今度の休みはどの町に行こう。わたしはコレクションブックを枕元の本棚に仕舞い、眠りに付いた。
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