2024.12.26──瓶詰の靴
ずっと使っていた靴の底が盛大に抜けたため、俺は冬の地面を裸足で歩いて家に帰り、押し入れの奥に仕舞っていた瓶詰めの靴を取り出した。
瓶の中はグリスで満たされていて、その中に革靴が二足入っている。通常、瓶詰めの靴は一瓶に四足を入れて売られているため、この瓶を開封するのは今回で三度目だ。
グリスから取り出した一足の靴を、風呂場のシャワーで軽く洗ってグリスを落とし、タオルで丁寧に拭き取る。テカテカに輝く革靴はまるで作り立てのようで、十年前に購入した靴とは思えない見た目をしている。
瓶から出したばかりの靴を履いて、悠々と町を歩く。道行く人の靴も、光沢が目立つものが多いのは、ちょうどこの時期に同じタイミングで靴の底が抜けるからだろうか。そうなれば皆足の痛みを堪えて裸足で帰宅し、瓶の中から新鮮な靴を取り出してそれに履き替えるのだ。
しばらく進むと、瓶詰の靴を売る生鮮靴店に行き当たった。店頭には、色とりどりのグリスが詰められた瓶が並び、これから受験をする学生や、来年仕事を始める社会人など、若い人々で賑わっている。家にある瓶にはまだ一足残っているが、また数年後には俺も新しい瓶を買うことになるだろう。
テカテカに輝く靴で町を歩く人々。それを陰で支えているのは、押し入れの中、瓶の中、グリスの中で眠る瓶詰の靴なのだ。
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