2024.10.12──秋の炎見
葉が燃えている。赤々と。
今年も秋がやってきた。この時期になると、燐昇紅葉が見ごろを迎える。
燐昇紅葉は葉の表面に浮き出た燐の粉が風などによって擦れて発火し、葉から葉へ、葉から枝、幹へと燃え移り、ついには森全体が紅蓮の炎で覆われる。
獄炎の中心にある燐昇紅葉の木には耐火性能、耐熱性能があり、森全てを燃やしてしまっても、燐昇紅葉だけは生き残り、次の春にはまた青々とした葉っぱを繁らせる。生存競争によって行きついた先が、ライバルの木々を燃やすという大胆な戦略だ。
燐昇紅葉によって燃える山の風景は、我ら鉄甲人種の秋の風物詩となっている。他の知性人達が避難する中、燐昇紅葉以上に耐火性、耐熱性に優れる鉄甲人種は各々の食事や酒を持ち込み、燃える木々の下で宴を催す。これは我らにだけ許された、秋の実りなのだ。
一方で、木々が燃え尽きると、我らは焦げた山肌を耕して畑を設ける。そして冬の間山に住み込んで畑の管理を行い、春になると他の知性人達に実りを供給する。その見返りに得た金銭によって、我らは身を磨くための油などの日用品を購入するのだ。
他を蹴落とす燐昇紅葉の力を借り、我ら鉄甲人種は他と手を合わせる道を今も歩き続けている。
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