2024.04.22──泥の家
今日は十年に一度の「引っ越し日」だ。
泥を乾かしたブロックによって作られた家は、水気のないこの極乾燥地帯においてデフォルトな建材だが、十年に一度、この地帯には大雨が降る。
雨が降ると、すべての家は流され、人々は過酷な環境に裸一貫で放り出される。
次の日から人々は皆で協力し、次の十年を過ごすための家作りを始める。大雨が降った直後の柔らかくなった大地から、ブロック状に泥を切り出し、切り出された泥ブロックはすぐに家の形に組まれ、それから三日間も日光に晒せば、乾燥して頑丈な新築が出来上がるのだ。
それはもう何百年も続く人々の慣習であり、その行いに疑問を覚える者はいない。
以前には、その十年に一度の建て直しを良しとせず、遠くから石材を持ち込んで、雨に流されない家を立てた者も居た。だが、今ではその手の人間はことごとく姿を消してしている。
泥家の住民達から村八分にされたから、ではない。大雨の年、他の人々の家が流される中、石材で作られた家はびくともせずに形を保った。
しかし、その家を支える大地が雨に溶け、中にいる住民ごと、その石の家は大地に沈んでしまったのだ。
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