Jul.

2024.07.01──ミッドサマースノーホリデー

 夏。炎天下。猛暑の地獄道。

 ペットボトル飲料は空になり、ハンディファンの電池は尽きて、いよいよ己の命の方も尽きるのではないかと思ったその刹那、頬に冷たい何かが触れた。

 手を当ててみると指先が濡れる。にわか雨でも振りだしたかと期待したら、思わぬ光景を目にした。

 雪だ。雪が降っている。それもパラパラとした風流なものではない。吹雪いてきている。豪雪はどんどん勢いを増し、このまま地表の全てを覆ってしまうのではないかと思った矢先、突然蛇口を閉めたようにピタリ、と降り止んだ。

 雪に腰まで埋まっていた私はそこからなんとか這い出し、周囲の様子を確認する。空には夏の太陽がギラついているにも関わらず、道にも屋根にも分厚い雪が乗っかっている。寒いような温かいようなこの光景は、まるで正月元旦の昼間のようだ。

 私は首に当てていた空のペットボトルに雪を詰め、この束の間の極寒の極楽が失くなってしまう前に目的地に着かんと、凍った地面を滑走していった。

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