2024.08.13──無味
塩味、甘味、苦味、酸味、辛味、旨味……料理を彩る味は大まかにこの六つに分類される。世の中に食材が数多くあれど、この六つのいずれかからも外れることはない。
故に、私はこの六つとは違う、さらに新しい「味」を追求してみたくなった。七つ目以降の味には果たしてどのような景色が広がっているのか?
私が着目したのが「無味」である。無の味。味がしない。つまりは上記で上げた六つの味のいずれも感じることの出来ない味である。
そんなもの料理には役立たないだろうと言う人もおられるだろうが、少し考えてみていただきたい。例えば水である。水道水、天然水、世の中では様々な形で水を飲むことが出来るが、知っての通り水は無味である。
しかし我々は、その無味の水から様々な味を感じとることも出来るだろう。甘味、苦味、時には辛味を。つまり無味とは、人間の舌が持つ味覚を過敏にし、多くの味を感じさせる可能性を持つ、「無限の味」でもあるのだ。
食材の話ではないが、世の中には約四分間、一切の楽器を演奏しないという「楽曲」がある。歴としたクラシック音楽というジャンルの中にこの奇抜な曲は含まれているのだが、その目的は無演奏中に生じる自然音や生活音を聴く、というものであり、先程私が述べた無味の説明に近いものを感じるだろう。
無は決してゼロではなく、無を感じる者、その周囲にある物の可能性を広げる、重要なファクターなのである。
私はこの無の味を追求し、人々の可能性を広げていくような無料理人として活動出来ていければと願っている。
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