2024.10.02──Been Beans

 豆料理研究家の蔦槻磨放は、訪れた国々でマメ科の植物を見つけては、豆を採取してその場で調理を行うという旅を続けている。

 豆というのは毒を持っているものが多く、処理の仕方には気を付けなくてはならない。その豆が現地で食されているものなら、現地の調理法に習うのが最適解と言えるが、料理人の端くれ故、磨放は自分流のアレンジを加えたものを拵え、それを現地人に振舞いたいというのが信条だ。

 その日も、磨放はとある国で変わった豆を見つけた。豆の形自体はオーソドックスなものだが、問題はその大きさだ。直径がなんと30cmという、化け物のようなサイズなのである。

 このサイズの豆が一つの房に三つ納められているため、房の大きさは1mを超える。ならその房が実っている木はどれほどの大きさなのかと思うところだが、実際は通常の豆の木とおおきな差異はない。この土地は栄養価が極端に少なく、そのような場所で成長するために種子に多くの栄養を蓄えるように進化した植物が多く存在して、この豆はその究極例と言えるのだ。

 ともかく、磨放にとっての問題はこの豆の調理法だ。現地人はこの豆を高熱で燃し、実際そのやり方だけで毒は抜けて普通に食べられるようになるのだが、調理の過程でほとんどの部位が崩れ落ちてしまう性質があり、可食部は意外にも少ない。

 食料に乏しい土地故、この豆が丸々食べられたら随分助かるだろう。磨放は上手い解毒法はないかと思案した。

 その結果行きついたのが、巨大納豆である。

 まず豆を煮て柔らかくし、ある程度熱を通す。これだけでは解毒は十分ではないが、納豆にすることによって、納豆菌が豆の毒素をほとんど分解してくれるようになり、豆の大きさはほとんどそのままに、この豆を食べることができるようになった。

 当面の問題を解決した磨放だったが、あとは現地の子に、このネバネバの癖のある食べ物を如何にして慣れてもらうか、現地の料理人と共に作戦会議を続けるのであった。

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