2024.10.03──考古学的検診

 全人類の33%が異能に目覚める今世、つい先日俺もそのある能力を身に着けた。

 それは『自分の人体を発掘する』能力……何を言ってるか分からねぇと思うが、読んで字の如くだ。なんの含みもない。

 自分の身体に手を突き刺すと、そのままズブズブと肉や骨を掻いて、自分の身体を掘り起こすことが出来るのだ。発掘作業時は自分の身体に損傷はなく、能力を解除すると身体も一瞬で元通りになる。見た目は中々にグロいが、メディアミックス化した際は上手い具合にデフォルメ表現探ってもらうとしよう。

 さて、この能力が最も役立つ瞬間、それは自身の疾患を正確に見つけることが出来るという点だ。

 例えば、顔の奥の方が痛いが、その原因が虫歯なのか、中耳炎なのか、蓄膿症なのか判断が付かない。耳鼻科に行くべきか、歯医者に行くべきか二つに一つだ。しかし俺の能力を使えば顔を掘り出して、どこに疾患があるのかを自分の手で特定が出来るというわけだ。しかし当然自分で見て確認する必要があるため、発掘の際に目を潰さないことだけは注意が必要だ。そして鏡越しに発掘現場と化した己の顔を見るのは中々にキツイ。やっぱ素直に病院に行こう。

 ……まあ長々と話したが、俺が何を言いたいかもう分かるだろう?

 お前がさっき俺に撃ち込んできた弾丸は、この通り発掘作業が完了している。「身体に何かを込める」ような攻撃、ようするに銃撃はピストルだろうがマシンガンだろうが、俺にはまったく無力だということだ。

 この能力を使えば名医になれるって? 残念ながら、俺が掘り起こせるのは自分の身体だけなんだ。自身の疾患に過剰に反応していたが故に、身に着けた能力なのかもな。

 というわけでだ。ここに居るガキ共の怪我はこの場では治せないので、さっさとそこを退いて病院に行かせてもらうぞ。

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