2024.06.28──魔を退ける者㉘
ミ・ナ・ライブーをこの世から退けた
厳戒態勢は解かれ、
翌日。
土屋は、ミ・ナ・ライブーとの死闘を演じた古墳の山中に一人立っていた。
そこは開かれた場所で、頭上を覆う枝や葉が少なく、青い空が広々と見渡せる。
しばらくすると、土屋の元に足音が一つ、近づいてきた。
「……ここにはあんまり居たくないんだがな」
「奴はもう倒しただろ? なんか用があんのか?」
「ええ。任務も一段落したので、貴方とじっくり話しておこうかと」
土屋は微笑した。
「貴方も何か、聞きたいことがあるのでは?」
「……ふん」
梨本は土屋の横に立ち、空を見上げた。
「結局……あのバケモノはなんだったんだろうな。本当にゾンビだったのか? 自分をミハルガノクニの王だとか言ってたが……」
「ゾンビなのは確かです。退魔物質が効きましたから」土屋が返す。「奴が何時からこの古墳に居たのかは不明です。ごく最近やってきたのか、それとも、遥か古代から生き続けていたのか……古墳の発掘隊は、石室から誰の遺体も見つけてないそうですよ」
「変な冗談を言うな。柄じゃないぞ」
失礼、と言って土屋は笑った。
「……ところで、奴のように人の姿を大きく外れた姿になったゾンビを、我々は変異体と呼んでいるのですが」
一呼吸置いて土屋が言った。
「この変異体の中には、ある特異な変わり方をするものが居ましてね」
「へぇ、どんな奴だ?」
「性転換するんですよ」
その言葉に、梨本は顔を土屋の方に向けた。土屋の表情はいつものように落ち着いていて、冗談を言っている風ではない。
「さらに不思議なのは、ただ性別が変わるのではなく、芋虫が羽虫へと脱皮するように、ゾンビになる前とは、まったく別人のようになります。このようなケースは極稀なことで、原因もほとんど解明されていません」
「……そう、か……」
梨本の額から、一筋の汗が落ちる。
「……お前は会ったことあるのか? そんな、ゾンビに」
「ええ」
土屋は言った。
「たった今」
その言葉に、梨本の口は閉じた。
土屋は梨本の方を向いた。
「貴方はよくご存じのはずでしょう。梨本──いえ、」
「
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