2024.01.10──硝子の青

 駄目だ。

 こんな硝子では、あの空に遠く及ばない。

 私はつい先程出来たばかりの、硝子の皿を床に叩きつけた。

 灰色のコンクリートの床にぶつかった皿は、カシャーンという音を立てて粉々に砕け散った。青色の硝子片があちこちに飛び散る。

 こんな青では駄目なのだ。この色は、私が求め焦がれたあの日の空の色には届かない。

 それは私が物心が付いて、初めて見上げた空の色。私の記憶の中の最古の空。

 現代のくすんだ灰色の空ではない。何よりも青い、おそらく人の手には届き得ない、彼方の青色。

 私は、その色に手を伸ばしたいのだ。

 床に散らばる出来損ないの青を片付けると、私は外に出るための服に着替えた。

 次の青を生み出すための砂と工法を求め、私は見たくもない灰色の世界に飛び出した。

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