2024.01.18──母への手紙

「拝啓 故郷のお母様。

 季節の節目で気温が急激に上下する中、元気でお過ごしでしょうか?

 私はご覧の通りすこぶる健康で、新しい仕事にも慣れてまいりました。来月には仕送りする金額をもう少し上げられるかもしれません。

 中々不況が落ち着かない中、世間では色々なことがありましたね。都では新種の病が流行して一時期は軽い恐慌状態となりましたが、今では特効薬が発見され、元の賑わいが戻りつつあります。

 故郷の方では例年よりも猛獣が人里に降りてくるケースが多いと耳にしました。既に退治されたとも伺っておりますが、家の畑はご無事でしたでしょうか? またお母様の作られるカボチャのスープが飲みたいです。

 先月の休みには都の中央にまで足を伸ばし、お祖父様にご挨拶へ伺いました。最近は政府と下請けの会社との間で板挟みになり大変だとこぼしておられましたが、依然として精力的に活動されております。

 後は、それから、こうして手紙を書き出してみると、話したいこと、伝えたいことが湯水のよううに溢れてきて、中々まとまりません。都でも紙は貴重なため、書く内容を縛るとなると、さらに正確さが失われていくようです。

 そして都から故郷に手紙が届くには片道で二週間、つまり往復だと一月も掛かります。送った手紙の返事を待つのに一月も待つのは、中々堪えるものがありますね。

 だからこうして直接お届けに参った次第であります」


「おかえり」

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