2024.01.06──空き缶ピラミッド

 外処仁は先程の散歩で拾った空き缶数十キロを、部屋の中央にある同じく空き缶で作られたピラミッドの上に積み終えた。

 空き缶のピラミッドは仁のコレクションであり、今のところの生き甲斐だ。これを始めたのは仁が25歳の頃で、もうすぐ5年目を迎える。仁も来月には30だ。

 空き缶を積んでピラミッドを作ろうと考えたきっかけは、単純なものだ。物臭な仁はよく部屋の中にゴミを散らかしているのだが、25歳の夏はしょちゅうビールを飲んでいたのもあり、部屋は空き缶で一杯だった。

 いつものように溜まったゴミをまとめて捨てるため重い腰を上げた仁は、床に散らばった空き缶を一つひとつ拾い出した。

 しかし、欲張って多く拾いすぎた結果、持っていた空き缶を全て取りこぼしてしまった。

 やってしまった顔を手に当て、また一から拾い直しかとため息を吐きながら、仁は再び床に目をやった。

 息を飲み込んだ。落とした空き缶は床に散らばらず、綺麗なピラミッド状になっていたのだ。

 それはただの偶然だったのかもしれないが、仁に大きな衝撃を与えた。

 それからというもの、仁は飲み終えた空き缶を捨てず、上記の経緯で生まれたピラミッドに積んでいくようになった。さらには、時間がある時は家の周囲を歩き回り、落ちている空き缶があれば持ち帰ってそれもピラミッドの材料とした。

 その行いは仁にとっては趣味と言うよりも、祭事のようであった。

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