2024.05.04──毛玉集め

 林原伝三はセーターに付いた毛玉を一個一個丁寧に取っていたが、30分以上続けてもまったく毛玉の減る様子はなく、段々違和感を覚え始めた。

 毛玉はもう床を覆い尽くさんばかりになっている。伝三が息抜きにその毛玉を一つに集めてみると、それはバスケットボール大の大きな塊になった。

 すると突然、その塊からニュンと触覚のようなものが生えてきて、さらに中央に大きな一つの目玉が出現した。塊は伝三の手から離れ、空中にフワリと浮遊する。

『私の名はダミヤン。こことは別次元にある宇宙よりこの身を転送したはいいが、事故が起きて身体がバラバラの状態になってしまっていた。そこをこうして貴方に助けられ、対話が可能なレベルまで知能を回復することが出来た。どうかお礼をさせて欲しい』

 いきなりのことに困惑する伝三だったが、ダミヤンと名乗るその生物から敵対心のようなものは感じられなかったため、とりあえずご要望に答えて今日の晩御飯を付くってもらうことにした。

 ダミヤンは目玉と触覚しかない身体で、実に上手く料理を作り上げた。味の方は、まあ食えなくはないというレベルではあったが。

 双方晩餐を平らげると、ダミヤンは伝三に相談を持ち掛けた。元の世界と同一の知能を取り戻すにはまだバラバラになった身体が足りないため、それを集めるのを手伝って欲しいということだった。

 伝三は家事をやってもらうことを条件に、ダミヤンを手助けすることに決めた。こうして林原クリーニング店は急遽オープンしたわけである。

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