2024.02.22──窓の外の蝶
瑞君杏は教室の窓からボーッと外を眺めていた。退屈を紛らわしたいときに窓際の席というのはありがたいものだ。特に嫌いな古文の授業のときは。
ふと、雲一つない青空の中を、何かがチラチラと飛んでいるのが見えた。
杏が目を凝らすと、それは小さな蝶のようであった。黄色くて全体のフォルムが丸く、モンキチョウに似ている。なぁんだ蝶かと思った杏だが、すぐに違和感を覚え始める。
杏の居る教室は校舎の三階だ。蝶にしては随分と高い所を飛んでいるなと思った。それに、なんだか遠近感が変だ。モンキチョウだとしたらあと数十センチ手を伸ばせば届く距離に居るサイズ感だが、それにしては妙に掠れて見える気がする。
──いや、違う。あれはモンキチョウなんかじゃない。
観察の結果、杏は違和感の正体に気付いた。今見えている蝶は自分の近くを飛んでいるんじゃない。飛行機やヘリコプターが通り過ぎるように、もっともっと遥か上空を飛んでいるんだ。
そして、そうだとして、そんな遠くの空を飛んでいるにも関わらず、自分の座る席からモンキチョウの大きさに見えるということは、あの蝶の実際の大きさは──
瑞君さん。不意に古文の先生に名前を呼ばれ、杏は一瞬空から目を離した。
すぐに視線を戻したが、窓の外は雲一つない青空が広がるだけで、蝶の姿はどこにもなかった。
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