第10話カストロ公爵再び①

 あ、ども、アレスです。

 昔はゴンザレスなんて呼ばれましたねぇ〜。


 詐欺師です。

 ごめんなさい、嘘です。

 最近、詐欺してません。


 させてくれません。


 そんな俺たちは、商業連合国の港街の一つに居る。

 特に理由はない。

 帝国の森を大火災で燃やしちゃったから逃げて来ただけ。


「ご主人様。ここの支払いはしておきました。

 本日のお酒はここまでです」


 そう言って、メメは俺の正面で静かにワインを飲み干す。


 首元までの茶色のサラサラのショートヘア。

 全体的にスタイルも良く超S級美人。


 クリっとした黒い目が宝石のようで、上流階級のお嬢様のようにも見える。


 No.2を助ける代わりに俺のしもべになった女。


 そんでもって、No.2を何だかんだ言って自分で救出してのけた。

 ナンバーズを除けば帝国最強の女。


 何故か目の前の女メメに貢がれています。

 何でついて来てんの?


 ねぇ何で?

 何でこんなことになってんの?

 怖いんだけど?


 この女には詐欺さぎってないよ?

 詐欺れなかっただけだけど。


 街の小さな酒場に、上流階級らしき雰囲気の令嬢が居るという違和感。


 別段ドレス姿などではなくごくごく一般的な旅装束なんだが、オーラがダダ漏れというか、隠せよ、という感じだ。


 酒場の看板娘をやっていた時は、普通に可愛い娘さんにしか見えないようにしていたから、オーラを隠すことなど簡単なはず。


 ならば何故しないのか!

 思わず聞いてみた。


 ワインをクイっと飲み干す。


「ご主人様がお望みなら検討致しますが?」


「ならば隠せ」


 隠して下さい。

 お願いします。


 魔力をふうっと抑えるのが分かる。

 人のオーラなどは魔力に依存する。

 威圧を行う者は魔力を変換してそれを行う。


 王族でも威厳のある者は自然とその魔力をオーラとしてまとう。


 世界ランクのナンバーズなどはその魔力を隠しもせず、化け物として君臨する。


 今は魔獣とかに押され気味だけど。


 世界ランクのNo.3、4、5、6、7の半分が死亡。

 世界の叡智の塔は別の者を表示することなく、その箇所は灰色で表示されている。


 この間、森の大火災で偶然No.2が助かって以来、魔獣のナンバーズの襲撃は止まっている。


 ナンバーズを襲撃していた何十万の魔獣は無尽蔵にいた訳ではなく、グレーターデーモンの力で襲撃の度に移転していたのかも知れない。


 俺もグレーターデーモンを目撃したが、よく逃げられたなぁと思う。





 ふと顔を上げると、どちらかと言えば酒場の看板娘の時の雰囲気に近いメメ。

 それはそれで可愛らしくて好み。


「魔力抑えてみたけど、どうです?」

「悪くない」


 高嶺の華も良いが、野に咲く花も素晴らしい。


「じゃ、宿行こうか。

 彼女の腰に手を回すが、パシッと素気無く払われる。


「言っておきますけど、部屋別々ですからね?」


 えー、そんな〜メメちゃーん!!

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