第56話ゴンザレス、連れていかれる?②
「てことは何か? オメェはカストロ公爵領の者に拉致られ、そんな服を着せられていたという訳か?」
「へい、流石にそう簡単に信じてもらえるとは思いやせんが……」
目隠しの上で、5人に連行されて移動。
アジトらしき建物の中で、囲まれて問い詰められる。
どう見ても怪しいだろうし、このまま売られるのかねぇ。
ズンバラりんと切られるのはご遠慮願いたい。
棟梁らしきガタイが良い男が俺の目をジーッと見る。
「……いや、信じよう。嘘を吐いてなさそうだ。俺は人を見る目には自信がある」
嘘はついてないけど目は節穴だね。
嘘を見破る技術というのは確かにある。
それに魔力を上乗せ出来るならかなり精度が高くも出来る。
それには余程の腕がいるけど。
つまり実力者。
ちなみに嘘を見破られることを想定するなら、初めから嘘を吐かなければ良いのだ。
嘘は付いていないが真実とは別ということは良くあることだ。
俺が詐欺師とかね。
とは言え、この山賊の兄さん方をカモる気は俺にはない。
俺は無事に逃げ出したいだけだ。
この兄さん方からもカストロ公爵領の奴らからも。
そのために一時山賊稼業というのもやぶさかではない。
世間というのは生きるためには厳しいのだ。
じゃあ、カストロ公爵領の奴らに付いて、行動すれば良いだろ? とか思った奴!
間違いだ!
俺、何処に連れていかれてたと思う!
コルラン国だぞ!?
カストロ公爵領なんて、コルラン国の野望を潰した重犯罪人じゃなかったのか?
何をどうするつもりだったか知らないが、普通に考えたら、鴨ネギだ、鴨ネギ!
囲んで殺されるわ!
しかもアイツらの口振りだと交渉の窓口、俺だぞ!?
アホかーー!!!!
死ぬわー!
そんな訳で、出発する前からずっと逃げ出すチャンスを
「つまりお前さんはカストロ公爵の影武者という訳か?」
「へい、もちろんあっしは望んでそうなった訳ではございやせん。
あれよあれよの間に引きづり込まれたんでさ」
俺は自分に不利にならないように真実を話す。
と言っても、特に何かを隠す必要はない。
俺がスラムの出ということも話した。
「そうか、すぐに信用する訳にもいかないから、暫く監視は付けさせてもらう」
「へい、それはもう当然でやす」
「ああ、それとそんな変な話し方はしなくて良いぞ? 聞いていてムズムズする」
棟梁の男は、顔を
「そうか? 奴隷時代には評判よかったんだが」
「奴隷までやってたのか。波瀾万丈だな」
その言葉に俺は肩をすくめる。
それとカストロ公爵が、この周辺を領地としたことを伝えた。
すると棟梁は大層驚いて
「なんだと? その情報はまだ手に入れていないな……。
うーむ、カストロ公爵は治安維持を徹底している。
娼館を始めとする、裏に繋がりやすい仕事を統制することで、無法者がのさばるのを防いでいる。
だとすると、この隠れ里も探られる可能性はあるか。
よくこんな最新情報を手に入れたものだな?」
「言ったろ? 影武者にされてたって。
その土地の統治のための策としてコルラン国と交渉するらしいぞ?」
俺の提案が通ってしまったせいとは言わない。
そもそも俺の案を採用する意味が分からない。
まあ、俺のような流しの旅人のアイデアを拾い集めて、色んな策を考えているのだろう。
そういう本も読んだことがある。
「色々参考になった。今日は休め。
監視は付けたままだが、疑いが晴れればいずれは待遇も考える。
だが里にもあまり余裕はない。
その状態でも色々働いてもらう」
「ああ、飯を食わしてくれるなら頑張って働くさ」
俺も詐欺師をしているのは、食うためには他に手段がないからだ。
飯を食う手段が他にあるならそれで良いのだ。
もちろん! 働かずに飯を食えるのが理想だ!
だから、メメとの暮らしは超最高だった!
たまーに、鬼のように恐ろしい目に遭ってたけど。
何、国家元首との会談って?
あんな壮大な詐欺を経験することなんて人生で一度あるかないかだ!
大体の人間はないはずだ!
……なのに3回は経験してる。
……違う、4回だ。
この間も何故か侯爵の執事の人に拉致られて、勝手に土地渡された。
ほ、ほんと何が起こってるんだ……。
ともかく! カストロ公爵領での暮らしみたいに、貴族とか偉いさんとかのおもちゃになってるのは、そいつらの気まぐれ一つで首チョンパだ。
そんなのは冗談じゃない!
スラム時代にそんなのはたっぷり見てきた。
おーれーはー!
なんとしても安全に楽しく生きるぞー!
この里が安全という訳では無いだろうけど。
見つかったらカストロ公爵に潰されるんじゃない? 怖い怖い。
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