第55話ゴンザレス、連れていかれる?①
現在、俺は謎の執務室のソファーで伸びている。
何故か次から次へと面会申し込みが来るが、全て断るように伝えた。
俺に会ってどうしたいの?
意外とすぐにキョウちゃんはカストロ公爵領にやって来て、エルフ女の指導を受けることとなった。
前に連れてた色気たっぷりの2人は何故か連れて居らず、1人で来た。
勿論、予定通り最強究極勇者コースだ!
選択肢を与えて違うコースを選ばれると、契約違反が発生するかもしれないので、最初からそのコース一択だ。
頑張れキョウちゃん!
そのキョウちゃんは俺が提案した通り、新領地で魔獣を狩っている。
エルフ女も一緒に行ってしまった。
よって、俺は1人でお留守番。
ぐうたらサイコ〜。
ちなみにイリス・ウラハラとは別人、と思われる『お嬢』なる人物が居るらしい。
若いながらお館様(俺ね)のお力になろうと必死に努力して、健気に頑張っているそうだ。
大変美しく、そしていつも優しい笑顔を絶やさず皆を勇気づけ、慣れない仕事でも時に人に教えを請い、時に夜分遅くまで学び働き、そして1人になるとお館様(つまり俺ね)を想い泣くのだそうだ。
俺の知っている娘ではなさそうだね。
かなりの美女らしい。
内政官男にお館様の奥方にどうかと言うので、「そういう娘は是非嫁に欲しいね」と返す。
すると内政官男、筋肉軍人男、娼館の女主人だけでなく、周りの使用人(誰の?)たち一堂にお願いします、と泣かれて引いてしまった。
……かなり慕われているのね。
俺がこの領で知ってるS級美女は、No.8の女だけだと思ってたけど他にも居たのね。
気付いたら手を出していたのに惜しいことをした。
No.8は美女だけど手を出して、No.0じゃないとバレると怖いから手を出さないけど。
俺以外は皆忙しく働いていて、あの奴隷だった美少年改め美少女までも、毎日走り回って仕事をしている。
ルカちゃんと言うらしい。
一度お茶を一緒にしてくれて、真っ赤な顔でモジモジしながらお慕いしておりますと言ってくれた。
その後すぐにエイブラハムとか言うオッサンが来て、あれやこれや仕事の指示を求められた。
それって領主の仕事じゃないの? って内容。
適当に答えておいた。
ルカちゃんは可愛かったが、俺こういうのなんて言うか知ってる。
油断すると、仕事させられる。
当然、平和な日々がいつまでも続くわけがない。
俺のところに内政官男がやって来て、こう言った。
「お館様、大変申し訳ありませんがコルラン国にまで御同行お願いします。
大事な商談なので」
断りたかったけど、断れそうにない。
馬車に押し込まれ、拉致。
本当はエルフ女も連れて行きたかった。
だけど、キョウちゃんに魔獣退治指導しながら、「キエー!!」とか「貴様の血の色は何色だ〜!」とか「ストレス発散! サイコー!」と叫んびながら、暴れまくっていたのでやめておいた。
どうやら、まともなのは俺だけらしい。
俺、詐欺師だけど。
旅のお供は男ばかり。
せめて、旅立つ前に心の癒しが欲しかったので、『お嬢』にとーっても会いたかったなぁと言うと、使用人(?)一堂に『お嬢』が泣いてお喜びになると思います。
今度嫁として迎えることも考えるよと軽口を言うと、またしても全員に泣いて喜ばれた。
考えるだけだよ?
てか、詐欺師の嫁になりたいってダメじゃね?
手紙だけでも送ってあげて下さいと言われたが、気が向いたらねぇ、と返す。
何を書けって言うんだ?
私は詐欺師です。
何故かカストロ公爵らしいです。
それで良ければ嫁においで?
書けるかー!
送ってくる分には好きにするようにだけ言っておいた。
その時、連絡つくところに居るとは限らないけどねー。
どっかで逃げるし。
そんな訳で楽しいぐうたら生活に別れを告げ、コルラン国に拉致される俺ゴンザレスなのだった。
旅はカストロ公爵領に来た時よりも、豪勢というか、護衛が沢山。
10馬車ぐらい。
何処のキャラバン? と思ったが、交易品もそれなりに積んでいるらしい。
大変ね〜。
夜中にトイレに行きたくなりこっそり抜け出す。
こういうのは外の警戒はしっかりするけど、中からは抜けやすいもの。
見張りの方がおられましたけど、わたくしのおトイレにまで付いてくるなんてさせませんことよ?
なーんてね、このまま逃げよ〜。
コルラン国ってこの間まで戦争してたじゃん?
行ったら殺されるって。
1人山の中に入り込み〜……。
もうさぁ……何というか、俺の人生、詐欺師生活してた時よりずっと波瀾万丈ってどういうことよ?
何でこうなったか分からない内に、5人ほどの山賊さんらしき人に、いつの間にか囲まれた訳よ。
「オメェ、良い服着てるな?身ぐるみ剥いでいけ」
俺は両手を挙げ、少し思案。
逃げようとする……切られる。
声を上げるとする……切られる。
大人しく捕まるとする……身代金? 誰が払うの? 詐欺師に?
てんてんてん……テーン!
「へっへっへ、兄さん方、ちょっと待って下さいよ?」
突然、豹変した俺の様子に山賊の兄さん方は少し引き気味に。
「うる、、「待った!」」
うるさいと叫ぼうとしたのだろう。
その山賊の言葉を遮り、シーっと口の前に指を立て合図する。
そして、山の下の方を、伺う。
「……あっぶねぇ、兄さん方、勘弁してくだせぇ。死ぬ気ですか?」
「ど、どういうことだ……?」
山賊の兄さん方は、戸惑いながら、俺に尋ねる。
「下の方に居るのは、カストロ領の騎士団でさあ。お偉いさんを護送してるでやんすよ。
気になるなら、ちょっと様子を見て来たら良いでやんす」
おい、と山賊の1番ガタイが良い男が声を掛けると、へい、と1人が猿のように俊敏な動きで、下に降りていく。
スゲェ、全く音がしねぇ。
俺の選択大正解。
こんな奴らから逃げ切れる気がしない。
猿っぽい奴が、すぐに戻って来る。
「そいつの言う通りカストロ領の騎士団が居ました。
かなりの人物を連れているのか、数が多い。この場を離れましょう」
猿っぽい顔のわりに、丁寧な言い方だね?
あんたら山賊じゃないの?
兎にも角にも、俺は山賊に引き連れられ、そのまま、カストロ公爵の一団から更に離れるように山の奥へと入っていった。
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