第84話ゴンザレスと連邦王国④
まあ、そんな世に出ることのなかった悪が、1つ潰えたことを良かったとするかどうかは別にして。
互いの兵を無闇に損なうのはゲシュタルトも本意ではない。
こうなってはもはや最強の一手しかないと、ドリームチームにお呼びが掛かった。
世界ランクNo.1、2、8、9、10。
それに勇者と剣聖の担い手、帝国No.1。
世界最強の全てをかき集めたと言っても過言ではないドリームチームである。
世界ランクNo.1のハムウェイ以外は揃いも揃って美女揃いで有り、ドリームハーレムとも呼ばれていた。
それを全員が否定していたが。
噂でしかないが、それを伝説上のNo.0が率いているのだと言う。
しかしゲフタルの者たちは元より、ゲシュタルトの者ですらその世界最強No.0など姿形も見たことがない。
よってドリームチームと魔王討伐軍が魔王討伐のためのプロパガンダとして、その噂を利用したに過ぎないというのが誰しもが共通する認識だった。
いずれにせよ、まさしく世界最強のドリームチーム。
ゲフタルの者たちもその力の差に慄き、早々に降伏するだろうと誰もが思った。
そのドリームチームが渓谷に入った。
結果はまさかの撤退。
無論、誰かが死ぬようなことはなかったが事実上の敗北。
ゲフタルはドリームチームが渓谷に入り崖を登ろうとしたところ、足場を大胆に崩し、渓谷の中にドリームチームを閉じ込めた。
そのタイミングで、上流に作成していた水門を開け、渓谷に水を流し込んだ。
ドリームチームもそれでやられたりはしない。
分断はされたものの、すぐに渓谷の中にある小山の方に登る。
この渓谷にある小山は、禿山や岩場ではなく草木も生い茂っている。
そこに火矢が撃ち込まれる。
当然、ドリームチームがそんな矢にやられる訳がない。
ゲフタルの狙いは別にあった。
渓谷に流す水量から逃げ込む小山に当たりをつけ、最初から油を仕掛けてあったのだ。
一斉に広がる火にたまらず分散するドリームチーム。
分散した内、後方に引いた者は炎のため進むことも出来ず立ち往生し、逆に進んだ者の中にNo.1が居た。
彼は渓谷の崩れた僅かな足場すら利用し、上を目指す。
そこに大きな岩が襲いかかる。
彼は槍を駆使しその大岩すらも砕く。
だが、ゲフタルは登ってくるNo.1にとんでもないものをぶつけた。
魔獣の巨体である。
魔獣はその種類にもよるが岩よりも硬いものも多い。
今回上から落とされた物も、その岩よりも硬い大きな魔獣の死体であった。
それでNo.1は魔獣の巨体を避けきれず、水飛沫を上げながら大量の水の中に落ちた。
それだけならドリームチームも体勢を立て直し、再び渓谷を登ることも可能だっただろう。
そこにトドメとばかりに、背後から魔獣の群れが襲い掛かってきた。
元々、この渓谷自体が魔獣の狩場として利用していた情報を、魔王討伐軍は得てはいなかったのだ。
これは単にゲフタル側が情報を統制していたためでもあるが、ゲシュタルト側に魔獣を狩るという考え方がなかったのもある。
この実にタイミング良く魔獣が襲いかかってきたことは、ゲフタル側の策とは言い難かったが、そうなるように魔獣の誘導が行われていたことは確かである。
こうしてゲシュタルト側が力を見せつけるはずが、ゲフタル側が逆に力を見せつける結果になったことは後々、ゲシュタルト連邦王国内に大きな影響を与えることは間違いがなかった。
この時、渓谷の裏側、つまりゲフタル側ではNo.1が墜落する姿を遠目に確認して、心から馬鹿笑いを繰り返し転げ回る1人の男の姿があったとか。
この一連の策を仕掛けた男の正体は、ただの詐欺師である。
ただこの時、この詐欺師の男は気付いていなかった。
この男の感覚からすれば、これは所詮嫌がらせ程度、なんとか追い返しただけである。
当然、ドリームチームに重症者が出るとも思っていないし、事実、擦り傷などはあれどドリームチームに大きな怪我は誰もなかった。
だが、それでも世界最強チームを叩きのめしたことに……『やっちまった』ことに、この男は気付いていなかった。
果たして、この男はそのことにいつ気付くのだろうか。
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