第20話【魔王編】メリッサとゴンザレス裏話

 お願いがあるの〜私あの最新バッグが欲しいの〜とか言われて、お姉ちゃんに金を貢ぐ事、幾星霜。


 なんの詐欺のせいか、メメちゃんが俺の腕の中で朝まで眠ってました。


 やべぇのS級美女。

 超可愛い。


 ゴンザレスの何かが目覚めてしまいそうなほど。

 謎のスキルでも目覚めそうだ。

 目覚めたとしても永遠の謎のまま終わるだろうけど。


 一体、俺に何が起きているのか?


 ゴンザレス、とんでもないものを盗んでしまいましたな!

 死罪!


 悶えているとメメちゃんがもぞもぞと動き出した。

 目覚めたらしい。

「あ……ご主人様、おはようございます」

 可愛く照れながらそう言ってくる。

 ご・主・人・様!?

 キタコレ。


 そこで俺はハッとなって目を見開き部屋中を見回す。


 し、しまった、逃げ遅れた!

 スキンヘッドのおっさんが怒鳴り込んで来て壺を売りつけられる!


 だが、いつまで経ってもスキンヘッドのおっさんがやって来て……。

 おりゃあ! わりゃあ!!

 誰の女に手〜出したか分かってんだろうなぁ!

 ケツ毛よこせやぁぁあああ!!!


 ……と怒鳴り込んでくる気配はない。

 ケツ毛ばかりだな、というなかれ。

 トラウマなのよ。


 そうしている間に、メメちゃんは起き出しビシッと隙なく昨日の服を着込む。


 俺はそれを呆然と見ていたが、さあ、ご主人様行きますよ、とメメちゃんに促され。

 言われるがままに準備を整えた。

 服を着て荷物を担いだだけだけど。


 何処に逝けば(誤字にあらず)良いのだろう?

 意地でも生き延びてみせるが。


 改めてメメちゃんは現在の状況を教えてくれる。


「カレン姫様はダレムの大森林で行方不明になられました」

 ダレム大森林は帝都の隣に位置する。

 人の手の行き届かない大森林だ。


 改めて思うが、なんでまたそんなところで作戦行動するかねぇ……。

 魔獣がいくらでも湧いて来てしまうだろうに。


 よっぽど帝国の戦力とNo.2カレン姫の実力に自信があったのだろう。

 無謀な。


 万の魔獣を倒したところで、数十万の魔獣に押し潰されればなんの意味もない。


 ……あれ?

 昨日も気にはなったけど、もしかして帝国は魔獣の発生メカニズムが分かってないのではなかろうか?


 魔獣は動植物の変異だ。

 1000年以上前の魔導暴走に端を発する。


 元々、魔獣は存在している。

 だからこそ、冒険者という詐欺師並みに底辺の狩人が存在出来るんだがな。


 それに加え、魔王出現によりその魔力に誘発されて爆発的に増える。


 魔獣を倒すと僅かながらだが変異した魔力がその周辺に漂う。


 通常ならば、風なりなんなりで流されて大きな問題にはならない。


 だが大森林のような元々、魔力がこもりそうな場所で何万という魔獣と戦うなんて、自ら殺して下さいと言うのと何一つ変わらない。


 馬鹿なの? ねえ? 帝国馬鹿なの!?

 やめて? ゴンザレス、魔獣に押しつぶされて死にたくないの。


 そんな俺の内心を知りもせず(バラす気も無いけど)、俺の背後でS級美人からの熱いし・せ・ん♡


 黙って考えごとしている間、ずっとメメちゃんに見られ続けてます。


 はい、バッチリ疑われておりますやん。

 どうしてメメちゃん、昨日の時点で俺を疑わないの?

 もう頂いちゃったじゃないの、ご馳走様でした。


 腕の中でぐっすり寝てたしなぁ……。

 よっぽど疲れてたんだなぁ。


 仕事とかでよくある詐欺だな。

 働かせて否定して追い詰めて判断力を失わせる方法。


 怖いお兄さんや戦争でもよく使われる手法だぞ!

 気を付けよう!!


 今回、疲れさせたのは俺じゃないぞ?

 俺はそんな壮大な詐欺など出来んぞ?

 思いついたら、やるかもしれないけど!


 だってS級美女だぞ!? S級美女!!

 生涯に一度お相手してもらえるかどうかだぞ!?

 まずお相手してもらえない、デートが出来たら奇跡!

 そんな奇跡、頂きましたー!!!


 ……人はそれを死亡フラグという。


 お、俺はそれでも生きるぞぉぉおおお!!

 そ、そうと決まれば、こんな危険な森になんてこれ以上居てられるか!

 俺は逃げるぞ!


 そんなことを考えながら、森へ森へ。

 逃げる方法を考え、さらにうだうだ。


「ご主人様〜、どうするんですか?

 森の中、着いちゃいましたよ?」


 知ってか知らずか絶妙なタイミングで声を掛けてくるもんだから、思わずビクーッと背筋がピンッとなってしまった。


「メメメメメ、メメちゃん!!

 お兄さんは今、周辺、けけけ、警戒で、緊張して、るの!

 急に声をかけちゃメッ! よ!?」


「メッ! ですか?」


「そう、メッ! よ!」


 ふ〜んと分かったような分からなかったような顔をされたが、なんとか誤魔化せたようだ。

 出てもいない額の汗を拭う。


 ……流石はS級美女!

 油断も隙もない。


「んじー」

 メメちゃんがわざわざ口に出して言ったので、身体が勝手にビクッとなってしまった。

 クスッと嬉しそうに笑われた。


 か、揶揄からかわわれてる!?

 酒場にいる時から、メメちゃんのそういった男をくすぐる手管は見事だった。

 本性がS級美女なら仕方ない!!


 結局、メメちゃんに操られるように、俺は更に大森林の奥地に入っていくのであった!


 もちろん森に入る前に、例の部族のところで作った魔物避けの薬は使用している!

 当たり前である!!


 そうこうしているうちに毒の沼地に出た。

 木の枝を沼に刺しその匂いを嗅ぎ、顔を顰める。

 これは……やはり油か。


 この大森林の中に油よりも燃える毒の沼地があると聞く。

 浴びればどのような生物もたちどころに死に至ると言う。


 あの書物の伝説はまことだったのじゃ!


 改めて言おう、俺は本が大好きだ!

 本のために世界を回っていると言っても過言ではないほどに!


 伝承、歴史書、三流幻想小説、なんでもござれだ!

 だが言うほどに世界に本は溢れていない。

 故に世界を回らなねば読み尽くしてしまうのである。


「ご主人様大丈夫ですか?

 何やってるんですか?

 馬鹿ですか?」


 思ったことを口に出した感じだが、そこに嫌味は感じない。


 そんな言い方でもS級美女メメちゃんに、ご主人様呼びされるだけで天にも昇る気がして危険だ。

 明らかな死亡フラグ?


 そう考えながら一歩進んだところで、木々の先に剣の光が見えた。


 うん。

 死亡フラグだ。


 グレーターデーモンさんと世界ランクNo.2カレン姫ちゃんが戦ってる。

 だから俺は言ってやったんだ。


「……帰ろう」

「駄目です」

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