第19話【魔王編】ゴンザレスとメリッサ裏話③
第一、世界ランクNo.0なんて実在する訳ないだろ?
世界ランクナンバーズはNo.1までだ。
それなのに世の噂はこうだ。
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、ランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
それが、世界最強ランクNo.0
誰も見たことがないなら居ないだろうが!
ま、そのおかげでチンケな詐欺師なんかの懐が潤うのだからNo.0様様である。
……そうして今もそんな詐欺みたいな話に引っかかってるんだよね。
それも帝国の諜報部隊長自ら……。
おっと、今はそんな居もしないNo.0のことなんかどうでも良い。
S級美女メメちゃんのお話を聞かねばならない。
メメちゃんは美女オーラを
自らも帝国No.1で腕にも自信があり、それでも、胡散臭い噂を頼るしかないほど追い詰められたか。
帝国が如何に絶望的な状況か、嫌でも分かってしまう。
国が滅びる時はいつの世も、こんなふうに突然なのだ。
……やっぱ、もっと早くに逃げるべきだったなぁー。
これ、魔獣に蹂躙されて帝国終わるんだろうね。
……改めて現状をメメちゃんに話を聞いたわけだが、やっぱり無理じゃね?
「カレン姫様はここからほど近い森で任務中、万を超える魔獣が発生するもこれを撃退。
しかしながら、グレーターデーモンという大きな角の魔獣により、森の奥地に追い込まれ現在行方不明になっております。
我々、帝国第3諜報部隊も必死に捜索するも、援軍として来た帝国の主力第一、第二部隊ごと数十万の魔獣に阻まれ、行方を探ることは困難を極めているとのこと……、この現状をなんとか打開すべく帝国は残しておいた第三部隊を出撃を計画してはおりますが……」
「無理だ」
俺はメメちゃんの話を遮る形で思わず口に出して言ったら、可愛いメメちゃんに絶望的な顔をされた。
やけに素直な反応だな、おい!?
あんた諜報部隊の隊長だろ!?
しかも我々、第3諜報部隊って正直に言っちゃってるよ!
密偵である事って秘密じゃないの!?
今更だけど!
前回、ソーニャちゃんが俺にこの店で密談しに来たから、このお店が帝国関係の店って丸わかりよ?
その店の看板娘のメメちゃんも密偵の1人だよね!
そして、裏の隊長だよね!
もっと言えば、元レイド皇国の皇女様だよね!
それが分かってて、俺がなんでこの店に居るかって?
メメちゃん可愛いじゃん?
昔から言われることわざだよね、可愛いって正義。
え? 違う?
違わない違わない。
しかしここに至って帝国上層部はこの状況をどう考えてるんだろうねぇ……。
滅びる直前だけど。
「帝国、かぁ」
手は無くはない。
恐らく、これしかないという手が。
帝国上層部の許可があれば、大規模作戦という事でなんとかなるだろうけど。
大森林の全てを魔獣ごと燃やすのだ。
それが出来る土壌があの大森林には、ある。
メメちゃんが俺に土下座までして頼みに来たのも独断だろうし、俺の提案を上層部に話しても疲れで気が触れたと思われて、療養のため良くて軟禁とかだろうねぇ。
そんな訳で俺の考えた案を実行すれば、帝国からのお尋ね者間違いなし。
それだけではなく、あの大森林は貴族とかの利権が絡み合った違う意味で魔の森だ。
それを燃やされたとなれば、貴族の面子やらなんやらで、それはもう恐ろしいことに!
帝国救って帝国から追われるなんて、割に合わなさすぎる。
俺はちょっと寂しげな顔をしてしまう。
……でもまあ、チンケな詐欺師。
そういう性分なのよ。
美女の悲しい顔に異常に弱い。
自覚あるの。
元王女の小娘とか生贄の女Aとか、とある部族の男の娘とか、いやいや。
俺が覚悟を決めようとウジウジしてたのをどう考えたのか、メメちゃんが慌てるように声を上げる。
「さ、さすれば!」
ん? メメちゃんが何やら覚悟を秘めた目で見上げて来たぞ?
「さすれば!
お助け頂けるならば帝国第3諜報部隊を抜け、貴方様のしもべとなりましょう!
この身、この身体全て御主人様の物となりましょう!」
俺は思わず椅子を蹴って立ち上がる。
「本気か?」
マ、マジでごわしょうか?
メメちゃんは頷く。
俺は天を仰ぐ。
ああ、素晴らしい……。
これはまさに人生を賭けるに値する。
S級美女だぞ、S級美女!
どんな罠だろうと突っ込むのが男ってもんだろ!
例えケツ毛を抜かれようと……いや、ケツ毛だけはダメだ。
それ以外はきっとなんとかなる、はず!
メメちゃんを頂いてから考えよう!
俺はごくりと喉を鳴らし再確認する。
大事な命懸けのS級美女との契約だ。
「今、この時、この瞬間から帝国を抜け我が物となる、良いか?」
メメちゃんは迷いなく頷く。
ああ……なんかよく分からないけれど、メメちゃん頂きます。
俺は頭の中がなんだか砂糖菓子になったように思考を停止した。
いつの間にか顔を上げていたオッサンにジェスチャーで、この娘、今から俺のだからねと身振り手振りで確認。
頷いたので酒場のマスターのおっちゃんに2階の宿の部屋を手配。
組織ぐるみの罠じゃないの?
え、本当に頂いちゃって良いの?
頂くよ? ほんとに頂くよ?
ダメって言われても頂いて良い?
良いよね?
メメちゃんには、まずは休むんだと肩を抱いて誘導。
万に一つも、いや、億に一つもこのままメメちゃんを頂ける可能性はないだろう。
きっと多分でもなく、間違いなく美人局でケツ毛を抜きに怖いお兄さんが突撃してくるだろう。
それでも行くのが
お前ってやつはヨォ。
俺は心の中で、笑顔で空に浮かぶ俺の漢な姿を幻視する。
そうして俺はついにメメちゃんを部屋に連れ込んだ。
では、いっただきまーす!
頂けました。
え、なんで!?
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