第11話ゴンザレス王、世直し珍道中?②
「お館様。どうやら次の街の代官が不正を働いている模様」
「良きに計らえ」
「ははっ!」
密偵らしき侍女服の女性がシュパッと姿を消す。
凄いね、馬車の中なのに扉も開けずに……あ、窓から出たのね。
んしょって声が出てるわね?
貴女新人ね!?
密偵ちゃんと名付けよう。
あの娘、俺の専属ね?
「……あまりホイホイと女性を増やさないで頂けると……いえ、なんでもありません」
ため息混じりのイリス。
増やしたというより増えたんだよ?
なんで俺に引っ掛かってんの、君たち?
あとイリス、ちょっとメリッサに似てきた?
ローラのことも伝えると、手配してありますと呆れながら言われた。
「アレス兄様はおモテになるんですね?」
一緒に乗っている男の娘の目が怖いわ?
ナリアちゃんを初めて見た時は、イリスは「またホイホイして……」と言うから、ナリアちゃんは男の娘だぞと伝えると目を見開いていた。
今もしげしげと眺めている。
ちょっと見るのを加減してあげなさい。
「どう見ても女性にしか見えませんね……」
そうだろ、そうだろ?
匂いも女の子なんだぞ?
「私も〜、後でアレスさんと遊びた〜い」
ツバメちゃんは御者で馬車を操作している。
ツバメちゃん、俺で遊ばないで?
世界ランクNo.1とNo.6、それに密偵付きなので、非常に楽な旅となった。
しかしまあ……。
「やはり連いて行ってはいけませんか?」
うりゅっと世界最強の小娘が上目遣いで俺を見つめる。
可愛いやら怖いやらでどうしよう?
いつのまにチンケな詐欺師にご執心だというのだ、この小娘は!!!
……最初からだったな、何故だ!?
「なぁ〜にを言ってるのかな、イリスちゃんは?」
暗殺が怖いから逃げてるだけよ?
目立つでしょ?
そう言ってるじゃん?
「世界ランクNo.1のイリスさんでさえ、足でまといなのですか。
流石です、アレスさん」
暗殺が怖くて目立ちたくないだけなのよ!?
危険な風評被害やめて、ツバメちゃん!!
男の娘は意味が理解出来ないのか、可愛くキョトンとしてるわ。
「ダメですか?」
「小娘も立派な美女だからなぁ〜、しょうがねぇか」
わたくしの(現実からの)逃避行に同行を許しますわよ?
イリスはキョトンとした顔をして嬉しそうに笑う。
「寝物語以外で美女とおっしゃって頂くのは初めてですね」
クスクスと嬉しそうに笑う。
うるせー。
「私もアレスさんで遊びたぁぁい!!」
ツバメちゃん、俺で遊ぶな!
そんなやり取りをしていると外から声が掛かる。
「お館様ー!!
どうやら次の次の街が盗賊に襲われてる模様ー!
如何なさいますかー!!」
馬車に並行して走る侍女服の密偵ちゃん。
目立つ!
目立つから!!
「イリス行ってあげて?」
「御意」
言うや否や、姿を消した。
窓からつっかえたりもせず。
流石……。
その後、大した
俺たちは悪代官の居る街に入るとそのまま代官屋敷へ。
そこにいたのは密偵ちゃんと縛られたオッサン。
うん、知らないオッサンだ。
若い娘を掻っ攫い、売り払っていたらしい。
不届き千万。
顧客先にケーリー侯爵の名前があったけど、見ないふりをしておいた。
身辺整理をしなさいよ?とお手紙。
オッサンの処分を偉い人に丸投げのお手紙をして、囚われていた若い娘たちを解放。
しゅぱぱっと色んな人が走り回ってる。
こんなに人が付いて来てたのね?
密偵って凄いわぁー。
他人事のようにそう思う。
……決してこの密偵たちが誰について来ているのかを考えてはいけない。
それは踏み込んではならない真実というものである。
ここまで来たら仕方ないので、代官屋敷のソファーでツバメちゃんとゴロゴロしながら、イリスからの報告待ち。
わりとすぐイリスが帰ってきた。
盗賊団は付近の悪徳商人たちに操られ、更にはここら一帯の代官と手を結び、エストリア全土の正統女神教派と連携し一大革命、つまり大規模テロを起こそうとしていたらしい。
今回、悪徳商人たちのリストから、そのルートと繋がりが洗い出せたので、大捕物となるとのこと。
へー、凄いね……。
「流石はアレス様です。
ここまでお読みだったとは。
確かにこれは通常の調査では尻尾を捕まえるのは不可能でした。
まさか自身を囮にして、No.0の噂で相手が動揺し、動きを見せた瞬間、その場でトドメを刺すとは。
相変わらずの
イリスは相変わらず詐欺師の俺を信じ切っていたあの頃と何一つ変わらず、目をキラキラさせてそう言った。
「うん、いつも言ってるけど、誤解だからね?」
もはや詐欺ですらないよ?
しかも誤解の規模がデカくなってない?
こうして、何かよく分からないままテログループを壊滅してしまい、今度は危ないからと帝国まで俺は護送された。
毎回、なんでこうなるの?
この日、エストリア国内の正統女神教派の邪悪な目論みは世界最強No.0によって阻まれた。
そして反対に世界最強No.0に救われた多くの人々が、新たな世界の導きを感じた。
そのうねりはやがて世界へと広がっていく。
もちろん、とある元詐欺師はそんなことを知る由もない。
今は、まだ。
……こうして、世界最強No.0の伝説がまた一つ。
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