第39話コルラン崩し①

 世界最強と呼ばれる存在がいる。


 曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。

 曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。

 曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者

 曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0


 その伝説は数多く、生まれも公爵様だとか、生まれながらの救世主だとか、魔王を指先一つで討伐したとか、大国の王となったとか数え上げたらキリがない。

 それら全てを合わせて、誰も真実を知らない……と思われている。


 かつて魔王を倒し、最後には邪神として歴史の闇に消えた勇者。

 それが、世界最強ランクNo.0


 それについて、とある元詐欺師はかたる。

 俺、違うからねと。




 どうも、アレスです。

 今となっては、ゴンザレスでもいいのよ?


 元詐欺師の現エストリアとゲシュタルト連邦王国の王様です。

 とっても変な肩書きです。


 戦乱の世から立身出世したみたいな肩書きですが、どちらかと言えば、詐欺の結果です。

 皆様、詐欺にはご注意しましょう。


 エストリアにソーニャちゃんもシュナもミランダも密偵ちゃんも、そして何故か小僧……レナも引き連れ帰って来ました。

 母親のサラの方は絶賛口説き中……のところを王都に連れ戻された。


 現在、メリッサとエルフ女、あとセレンも一緒に部屋でお茶をしております。


 美女の嫁に囲まれてケツの穴がムズムズします。


 現実に頭が追いつきません。

 俺の頭! 早く追いつけ!!


「やっと帰って来たわね、ロクデナシ」

「ご主人様らしいですよねぇ……」

「時々はこうして帰って来てくださいね? 陛下」


 お腹を大きくしたエルフ女が呆れ顔で、同じくお腹を大きくしたメリッサが慈愛の笑みを浮かべている。

 旧エストリア国元王女で現俺の嫁の1人セレンはニコニコしながら。


 セレンは今回、妊娠が判明。

 え? 誰の子……って惚けると全員に叩きのめされるから口にしないよ?


 間違いなく俺の子です、はい……。

 君ら全員嫁同士仲良いよね?

 珍しいというかあり得なくない?


「それは間違いなくご主人様のせいかと」

「へ!?」


「あんたを1人占めしようとしたら、絶対逃げるに決まってるでしょ?

『S級だから俺の嫁になるなんて、あり得ない!』とか言って」


 ……言う。

 絶対言う自信があるわ、わたくし。


 だってS級よ? あり得なくない?

 あ、あり得ないことが起こっている……!


「ですから、陛下を繋ぎ止めるには全員で協力するしかないのですよ!」


 ううむ……。

 これに関して、ゴンザレス言い返せない。


 ま、まあ、嫁が仲が良くて良かった、ということで……。


 おかしいわ? 幸せなはずなのに、全員で寄ってたかって捕食されてる気分がするのは何故かしら?


「……それとご主人様。またホイホイしてしまったみたいですね?」

 メリッサが侍女姿の密偵ちゃんからお茶を貰い、それを口にしながらボヤく。


「まあ、それについて今更あんたにとやかくは言わないけど、ちゃんと一人一人大事にするのよ?」


 エルフ女、オカンか。

 あ、いや、俺の嫁の1人だけど。


「小僧は違うぞ!

 俺はガキに手を出す趣味はない!」


「小僧と言いましても陛下。

 後3、4年もすればレナさんも立派な大人の女性になりますし、グリノアとの関係もある上に陛下を慕っておりますので」


 うぅむ……3、4年もすれば立派な美女になる気配のレナ。

 本人が良いなら、ゴンザレス断れない。

 むしろウェルカム!!


「ほんっと相変わらずね……」

 当たり前だろ、エルフ女!

 美女は世界の宝だ!


「ま、あんたらしいわね」

 だろ?


「アレス様、お手紙です。

 コルランの方から」

 そこにイリスが部屋に入って来て、俺に手紙を渡してくる。


「そうか」

 俺はその中身をさっと確認して立ち上がる。


「ご主人様、今度はどちらに?」


 メリッサだけでなく、エルフ女もセレンも不思議そうに見てくる。

 止めるわけではない。

 ま、今更、止めたりもしないか。


 俺は皮肉げに笑い、振り返る。

「ああ、ちょっとコルランを崩しに」


 さあ、最後の仕掛けだ。

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