第38話魔王と世界最強No.0のネタバラシ③
「……殺された?」
「そう、殺された」
世界最強No.0は確かに世界を魔王の脅威から救った勇者だ。
だが、その後の歴史に魔王の脅威が伝承されなくなるぐらいNo.0は酷かった。
いくつもの村や街や国がそのわがままのために滅びた。
ある国では王族がNo.0を利用しようとしたせいで、その怒りを買った。
その王族だけを殺し尽くすならまだしも、なんの関係もない国の民ごと殺し尽くした。
自分を助けてくれなかったからというよく分からない理由でな。
日々を生きるのに必死な人々が圧倒的な力を持つNo.0を、命懸けで手助けしたいと思うわけないのに、な。
一般の人ってのは生きるだけが限界だ。
だから、まず自分を助けて欲しいわな。
No.0に要らないチョッカイを掛けていない人々からしたら、異界の勇者と言えど災厄となんら変わらないということだ。
そんな訳であの手この手で世界最強No.0を殺そうとしたわけだが……。
正しく世界最強は世界最強であり、そう簡単に死んではくれなかった。
力押しはもちろん毒や呪いも何一つ効かなかった。
スキルとやらの効果らしい。
簡単に言うとスキル……今で言う邪神エネルギーというのは、異界を通る際の魔力の変異現象らしい。
同様の変異現象が魔獣の発生原因でもある。
つまるところ、人の魔力変異が勇者という存在を生み出す。
動物が魔獣に変質するのと原理は同じだ。
キョウちゃんが元の世界に帰れたのは、それと真逆の現象を発生させたからだな。
魔獣に変異するエネルギーを逆噴射させて、元の世界に飛んで行くような感じかな?
だから、元の世界に戻ったら魔力もこちらの記憶も無くなるだろうな、それとも無かった事になるかな?
あ、ミランダはキョウちゃん知らなかったな?
そうだなぁ……、強いて言うなら『今代』の勇者だ。
魔王が復活したのも、その今代勇者を召喚したことがキッカケだ。
魔王自体がその『勇者』発生のエネルギーを感知して発生する、呪いみたいなモノだからな。
呪いというのは『繋がり』があって初めて意味を成す。
勇者が召喚されなければ魔王は復活しなかっただろうよ。
話が逸れたな。
とにかく、世界最強はやはり簡単に死んではくれない。
それを殺したのが『女神』だった。
つまり、世界最強No.0こそが本当の意味での伝承に伝えられる邪神だった、という訳だ。
「女神教の伝承なんて、ネタが分かると面白いぞ?
『女神はその身を犠牲にして、邪神を次元の彼方に追いやった』
女神教の伝承の一説だ。
どういう意味か分かるか?」
ミランダは首を横に振る。
「そのままの意味じゃないの?」
「そのままと言えば、そのままだな。
ようするにベッドでの男女の行為中に暗殺したわけだ」
ちなみに初代『女神様』も当然、S級美女だったようだ。
だからS級美女は恐ろしい。
男にとってしてみれば、世界最強の暗殺者だ。
「うわぁあ……歴史ってエゲツない」
「その結果、世界を救ったわけだから、女神っちゃあ女神だな。
女神は勇者に付き従った王族の姫で、その国は世界最強No.0に滅ぼされた。
その恨みを決して忘れる事なく従順に世界最強No.0に従いながら、ただ一度のチャンスをひたすらに耐え見事に本懐を遂げた。
それで、だ。
崩壊した世界はその『女神』を祭り上げ、女神教を作り上げた。
2度と勇者召喚による悲劇を生み出さぬように、女神と邪神の戦いとして伝承した。
……だが、そこからが問題だった」
「問題?」
ミランダは小首を傾げる。
メリッサもイリスもエルフ女も……他の女もそうだが、この小首を傾げる仕草凄く可愛いよね?
S級美女だから尚更。
後でベッドでお仕置きしよっと。
俺はそう心に決めて、話を続ける。
「こうして世界はめでたく救われた訳だが、『女神』は世界最強No.0という邪神との日々ですっかりその心を壊してしまった訳だ。
ずっと親と国民の仇に身体を捧げていたわけだからな」
2度と世界に世界最強No.0を生み出さぬために、『勇者』を生み出した土壌を全て取り払おうとした。
今日に至るまで空白の1000年間。
勇者召喚技術は元より、新たな文化、革新的な考え、本という歴史が新しく生まれないように徹底的に監視を始めた。
それを統括したのが世界に広まった女神教だ。
さながら暗黒時代と呼べる停滞した世界。
それがこの空白の1000年を生み出した正体だ。
その監視は女神教により実行に移される。
世界に新たな文化や革新的な考えをする王族や有力者が現れるたびに、女神教は徹底的にその存在を叩き潰した。
ウラハラ国も、あのレイド皇国ですらも、女神教が関わり潰された。
1000年、そうやって歴史は止められた。
女神教によって。
ただなぁー。
停滞した世界って奴は、下辺へ堕ちてしまった奴らにはなんの未来もない訳よ。
没落した貴族はそのままどこまでも堕ちて、スラムで生きる者はずっとスラムで。
どれほど有能であろうと、浮上するシステムがこの世界に存在しない訳だ。
だからカストロ公爵領で奴隷を集めただけで、あんなにも有能な奴らが拾えた訳で。
俺は行く先々でそういう奴を拾っただけだ。
例え、滅びた国の姫であっても。
それをホイホイだなんて!
失礼しちゃうわ!
有能な人たちは沢山居るのよ!
その人たちに頑張ってもらうの!
わたくしの代わりに!!
「……ねえ、ゴンちゃん?」
「なんだ? 妖艶残念娘」
「今、話してくれたことって、この世界の根底に関わる重要な話じゃない?」
「んー、そうだろうなぁ。
これを知ってることがバレたら女神教の過激派に殺されると思ったから、何にも知らないフリして逃げ続けたんだからな」
「……え?
じゃあ、どこに居るかも分からない女神教の過激派にこの話知られたら、かなりヤバいんじゃ……」
「おー! ヤバいかもな!
ヤバヤバだ。
王とか関係なく殺されるな!」
妖艶娘は驚愕の顔をする。
……そして。
「そんな話聞かせるなぁぁあああ!!!!」
涙目で叫んだ。
「うるせぇ! お前から聞いてきたんだろ!
この残念妖艶娘!」
「そこまで聞いてないもん!
誰にも知られてないけど、本当の意味で魔王倒したのゴンちゃんだよねって聞いただけだもん!
世界最強No.0の秘密とか女神のこととか聞いてないもん!!」
やめろぉぉおおおお!!
さっきバレたら殺されるかもって話したばかりだろうがぁぁあああああ!!!
何処に暴走する女神教がいるか分かんねぇんだぞ!?
俺は必死になって妖艶残念娘の口を塞ぐ。
「もがーがもがもが!」
「モガモガうるせぇぇえええ!!
後で絶対ベッドでお仕置きするからな、徹底的に身体でお仕置きするからな!!
覚えとけよ!!」
こうして、なんだかんだで俺はミランダも連れてグリノアを後にした。
何故か、小僧……小娘レナも付いてくることになったが。
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