第6話【序章の詐欺】領主ゴンザレス裏話②
現在、貰ったウラハラ領内の屋敷の執務室で、俺の部下のような態度を取る小娘にあれやこれや指図している。
ねえ? コレってどういうこと?
なんでこんなことになったんだ?
ケーリー侯爵から貰った土地は当然と言えば、当然の如く厄介な土地だった。
仮想敵コルラン国との国境の領地。
本来ならば、こういう土地は武に特化した辺境伯など武力も財力もある有力貴族を配置するのだが、ここは数年前の小競り合いでエストリア国がコルランから奪い取った土地。
だからポッと浮いた土地になってしまっている。
エストリア国の防衛ラインは、ここから北に位置するサルビア大要塞を基点として展開しており、実質、捨てられた土地である。
各国それぞれ制度は違うが、書物によるとエストリア国は分類上、封建制度と呼ばれるもの。
領主貴族の代表として王がいる感じ?
つまり、政治的なあれこれがややこしいことを抜きにすれば、ケーリー侯爵のような大貴族が、自分の領地をこんな風に小娘に分けたとしても問題はない訳。
ゴミを押し付けられたね!
まあ俺には関係ない、頑張れ小娘!
……そのはずなんだが、何故か小娘が俺を『あるじ様』と呼び、俺の秘書のような態度。
何故か俺が執務室の椅子に座って、小娘が俺に判断を仰ぐ始末。
俺、ただの詐欺師だから。
世界最強のNo.0でもなければ小娘の主人でもない。
もっと言えばカストロ公爵アレスの名前も、小娘が自分の国の大貴族の名を
No.0もカストロ公爵アレスも居ないよ?
ここに詐欺師が1人居るだけだぞ?
詐欺師とは、怖くてバラしてないけど。
小娘いきなり切りかかる娘だもの、可愛いけど怖いの。
今ではケーリー侯爵の
当然で当然の話だが、これには大問題がある。
奴隷になる奴は奴隷になるだけの理由がある。
犯罪者だとか、滅びた国の難民だったり、貧農の子だったり。
それでも難民や貧農の子らは仕事を割り振り順次奴隷解放予定。
そもそもこの領内、人手不足なの。
犯罪奴隷については、よく見極める必要がある。
その中でも、滅びた国とか小競り合いにより略奪された人々も難民や貧農の子たちと同じ条件にした。
当然、こんな奴らは反乱の危険があるので通常はそんなことはしない。
だが俺の場合。
反乱〜?
取りたきゃ取れよ、俺の土地じゃないし。
それが本音だ。
解放するにあたりそいつらの中で自然とリーダーになっていて、かつ、話が通じる奴を選ぶ。
そんでこの領内の実情を伝え、反乱についても事前に言い含め、同時に近隣で自分たちのような難民が居るなら呼び寄せるように伝えておいた。
すると泣かれた。
難民は国が無いから、本当に『生き場所』が無いものね。
人権とか立場とか、そもそも国がなければ与えられないから、皆、自分の国を必死に守るのよ?
そんで呼び寄せられた難民たちはこれがまた、よく働くの。
元ウラハラ国の国民だった人も流れて来た。
密偵かなと思ったら本当に国民だったみたい。
でも国の元重役とかではなく一般庶民。
それでも小娘嬉しくて泣いてた。
ゴンザレス、ちょっとそういうのケツの穴ムズムズする。
まず最初に密偵を疑う汚れた大人だもの。
俺は根なし草魂が根付いてるから、同じところに居る気は無いけど、それでもちゃんとした仕事があれば安住するかも。
詐欺師〜?
スラム上がりに出来る仕事なんて限られてんの! 仕方ないの!
楽しんでやってるわけじゃないのよ〜?
ちょっとおバカなヤツから小銭を騙し取って、お姉ちゃんと遊べる夜は最高だけどね!
差し当たり、この領内を取りまとめるための筆頭が、例の天才執政官スラハリと騎士団長セボン。
ところが何故か知らないがそいつらも一生懸命働くの。
ゴンザレスには理解出来ん。
ついには俺をお館様呼び。
いや、お前らの主人、元王女の小娘だから。
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