第5話【序章の詐欺】領主ゴンザレス裏話①
結論から言おう。
エストリア国国務大臣ケーリー侯爵から、土地を譲って貰いました。
な、なんで?
そりゃさあ、言ったよ?
タイミングを合わせて交渉すれば、乗ってくれるかもねとは言ったよ?
そのタイミングっていうのが、俺がキョウちゃんに襲われてるタイミングだったのは、納得いかないが。
キョウちゃん?
可愛かったよ?
勇者の情報は当然、事前に得ていたよ?
何故って、エストリア国所属の世界ランクナンバーズはNo.5、6は大要塞サルビアに赴任してるんだから、来る訳ないじゃん。
コルラン国が怪しげな動きしてる情報は商人からも聞けるよ?
まあ、世界を旅して色々な情報と書物を照合してようやく気付けるレベルだけどね、まだ。
だから、No.8が暴走した時に止められる戦力は勇者ぐらいしかいないわけ。
そうでなくても、勇者の情報は収集してたけどね。
これについては、また今度。
とにかく、調べて分かった。
この子、女の子だわ。
姿形は男だが、俺の嗅覚を馬鹿にしてはいけない。
女に対する嗅覚だけは、かなり自信がある。
本人に自覚があるかどうかは知らんけど。
それともう一つ、今回の案を元王女の小娘にする前には、ケーリー侯爵のことも調べてあった。
まあ、小娘の宝石で得た金の大半注ぎ込まないといけなかったが、意味はあった。
今回の担当がケーリー侯爵が担当することも事前に分かっていた。
曲がりなりにも、滅びたとはいえ王族を相手にするのだから、それなりの地位でなければならない。
外務大臣は他国に外遊中。
宰相グローリーはこういう場合動かないのと、勇者と距離をとっている。
エストリア国の内情が分かれば、自ずと選択肢は限られる。
で、そのケーリー侯爵がTS薬を色々悪いことして、手に入れたのが分かった。
何に使うつもりだったかは分からないが、ろくなことではあるまい。
せっかくなので、後々のことを考え、屋敷内を探し回り、キョウちゃんに使っておいた。
本気で逃げ回ったついでだったけど。
キョウちゃん、凶暴すぎ!
流石、異世界勇者!
色々頭おかしい!!
そうなのだ。
異世界から召喚されるにはそれなりに事情がある。
その世界から逃げたい願望があること。
一つの事象を法則を無視して飛ばす、なんてことは本来不可能だ。
だから魂のみが移転する。
さらにその魂も初めから世界から歪んでないと引き抜けない。
性格破綻者や心と身体の不一致などなど、だ。
だから異世界召喚は禁忌であるのだ。
これについては、俺も全てをまだ把握出来ていない。
だが、いずれ明らかにする必要があるかもしれない。
……俺以外の誰かが。
俺はやだよ!?
面倒くさい!
金にもならんし!
でもキョウちゃん可愛かったから、手に入るなら頑張っても良いかも?
そんなこんなで現実逃避しながら、小娘と一緒に新領地に連れて行かれることになった。
なんで俺も一緒に?
「私はあるじ様に従うだけですから〜」
主体性はどうした小娘!!
もっと意思を持てよ!?
そして可愛いけど、怖い。
ちっくしょぉぉぉおおおお!!!
怖くさえなければ、S級美女の小娘とキャッキャウフフの頂きますの日々だったというのに!!!
俺の心のゴンザレスが滂沱の涙で大地にうずくまり拳を震わせている。
ああ、世の中ままならない。
そう思いながらも、この小娘に新領地の準備の段取りなんて、無理なことぐらい分かり切っている。
強くても元王女様育ちの純粋培養、そんな段取りなんて出来っこない。
仕方がないので俺はケーリー侯爵と交渉して、現地での奴隷解放の手筈と支度金を得ることに成功した。
明らかなコルランへの防波堤に使うつもりなのは分かり切っていた。
それならそれで少しは防波堤らしくなるように、幾分かは金を回してもらえるということだ。
もちろん、そんな風に交渉した。
少しは役に立って見せますよ、とね。
んで、赴任して前任者は颯爽と逃げた。
そりゃそうだ。
仮想敵国のコルランの国境の領地だもの。
俺も逃げてーなー。
逃げれるけど。
ちろっと小娘を見る。
「あるじ様!
ここが私たちの領地なんですね!」
キラキラした純粋な瞳の小娘は、ようやく得た安住の地(?)に嬉しそうだ。
詐欺師すらも、これにはホロリ。
コルラン国にもうすぐ攻められるのよ、ここ。
まあ、そこまで情報把握している奴も居ないだろうけど。
まあ、せっかくだし、好きなようにやってしまおう。
いざとなれば逃げるし。
結論。
……やり過ぎた。
「あるじ様、奴隷のリストと追加の仕事です」
秘書のような態度の元王女の小娘を、顎で使うスラム上がりのチンケな詐欺師。
まずこの現状に誰よりも俺が付いていけません。
とにかく誰かにこの土地を押し付けてここから逃げよう。
それだけを考える。
このまま逃げても間違いなく、この小娘は俺に付いてくる。
ちろっと見ただけで、ニコッと微笑まれる。
可愛い〜んだよぉ〜。
これでいきなり切りつけるような危ない女じゃなけりゃあなぁ……。
奴隷リストの中で、滅びたシースルー国の天才執政官スラハリと騎士団長セボンの名を見つけた。
なんでそんな重要人物がこんなところで奴隷してるんだ?
「コイツとコイツ。
この2人に選ばせろ。
金はこの2人の言い値だ。
その後、この件はこの2人が代表だ。
委細全てを任せろ」
こいつらの有能さは聞いている。
さぁて、何処まで押し付けれるかなぁ。
予算は当然無尽蔵じゃないからなぁ〜。
金策もちょっと危ない橋を渡る必要あるかな。
俺の急な指示に一瞬だけ驚いた表情をしたが、この女はふわりと笑い、一言。
「御意」
く!? なんてそそる笑い方しやがる!!
今すぐベッドに引きづりこみたい!!!
そしてきっと引きづり込めてしまう!?
あれか!?
猛毒を持つ果実はとんでもなく美味そうに見えるアレだな!?
執務室で1人になった瞬間、俺はついに椅子の上で身悶えして転がる。
食べてぇぇええーー!!!
この小娘が心底、危ない女でさえなければぁぁあああああああああ!!!!!!
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