第4話【序章の詐欺】公爵ゴンザレスVS異世界召喚勇者の裏話
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
それが、世界最強ランクNo.0
だが、とある詐欺師は
元々そんなのいねぇよ、と。
俺の名はあれっす、じゃない、アレス。
昔の名はゴンザレス。
昔のことだ、忘れてくれ。
詐欺師だ。
世界ランクナンバーズの化け物であるNo.10の小娘と帝国の世界ランクNo.8との争いに巻き込まれ、あれからどうしたって?
No.8に昇格した元王女の小娘に懐かれたよ!!
しかもこの小娘、文無しだ!!
なけなしの宝石を俺に譲ったらしい。
何やってんの?
「あるじ様が宜しければ身体で払います」
そう言われて、思わずゴクっと生唾を飲んでしまうのは仕方ない。
小娘は俺が出会った女の中でもS級の美女と呼んでいいレベルのイイ女だ。
後先考えずに押し倒してしまいたいと心から思う。
だが、しかし!!!!
可愛いんだけど、良くねーよ!!
こぇええんだよ!
いきなり切りかかって殺されかけた記憶は忘れてねーぞ、ゴラァ!!
しかも手出したら、本気で一生付きまとわれそうな自爆女!
エストリア国内に密かに作られた帝国の拠点を潰したあの後、すぐにエストリア国の憲兵が来た。
元王女の小娘は、No.0様の導きに従ったまで、と答えて憲兵を困惑させた。
こ、この小娘役立たねぇーー!!!
仕方ないので巻き込まれた俺が、本当ーに仕方なく事情を説明。
「こうして見事、我が王女イリス様は帝国の拠点を潰した訳である。
エストリア国の方々におかれましては、イリス様の保護をお願いしたい」
エストリア国の憲兵は戸惑いながら応える。
「そ、それは世界ランクナンバーズのイリス・ウラハラ王女殿下の亡命ということでしょうか?」
そりゃそうだ。
突然、こんな大物の亡命だ。
憲兵ぐらいでは判断出来るわけがない。
俺は静かに頷く。
でも頼むから早く偉い人に連絡して是非、引き取ってくれ。
なんと言っても、この小娘の身分も実力も間違いはない。
ただ添え物にたまたまお付きの詐欺師が1人くっついているだけ。
その詐欺師もこの小娘をエストリア王国に押し付けたら、颯爽と立ち去るという超好条件!
さあ、持ってけドロボー!!
なおこのやり取りの間、小娘は自分からはろくに口を開かず質問に答えるぐらい。
ええ、とかはいとか、憲兵の前であるじ様とか言ったから
「イリス様とのお遊びですよ。
まあ、帝国から逃げ回っておりましたからな。
私めが
乾いた笑いになったのは許してくれ……。
おいコラ、小娘。
俺が『イリス』と呼んだら見てわかるぐらい嬉しそうな顔すんな、お前一体なんなの!?
憲兵の詰所であれやこれや手続きはあったものの、無事に報酬を貰える手筈は整うことになり俺は上機嫌。
面倒な爆弾女は引き取られ、俺は報酬のおこぼれを頂いてトンズラ予定。
この日はその街の酒場で、エストリア国の金で酒を浴びるほど飲むのだ。
宿も手配してもらってある。
「あの……あるじ様。これからどうすれば良いのでしょう?」
おずおずと小娘が不安そうに俺に尋ねる。
あぁぁん?
……である。
何故、俺に聞く?
そんなもん好きにすればいいだろうが。
しかし、酒で上機嫌になっていた俺はやらかした。
やらかしてしまったのだ!!
「そうだなぁ、俺なら土地を貰うね!」
「土地ですか?」
「そうだ、土地だ。
その土地で一から出直す方が、失ったモノを取り戻すよりよっぽど楽だし効率が良いってもんさ!
そうだなぁ、例えば……」
この夜、調子に乗った俺が語った手口について、この小娘そのまま実行しやがった!!
「そうですか、アレス殿はカストロ公爵の……」
「はい、正統後継者になります」
小娘とおっさんが話しながら、ニコニコ笑顔。
おい、どっちも目が笑ってないんだよ、こえぇよ?
俺の隣に居る小娘はまあ、説明不要だな。
世界ランクNo.8の元ウラハラ国の王女、イリス・ウラハラ。
今は虚ろな目はしていない。
結構、綺麗な目をしているが騙されるな!
コイツは化け物だ!
おっさんは、金ピカ貴族のおっさん。
金髪小太り、やたらとジャラジャラと悪趣味な服。
ザッ貴族って感じ。
なんでこんなことになってんだっけ?
この女が俺をあるじ様とか呼ぶからだ。
あの夜、朝起きて顔を合わせてもあるじ様と呼ぶから言ってやったんだ。
「俺はお前の主人ではない」
「いいえ、私の忠誠は永遠にあるじ様のものです」
いらんよ、こんな自爆女。
あと、ところどころで俺をNo.0だと言おうとするから、No.0と誰にも言うなと釘を刺す。
「あるじ様は正道を行かれるお方。
各方面にあるじ様のご威光を伝えねばなりません。
No.0の存在を示すのもその一環なのですが……」
そんなことまで言われた。
ジョジョジョジョーダンじゃねぇ!!
詐欺から逃れるにはな、認識されたら終わりなんだよ!
存在を認識されてしまった後で、誰かに情報を抜かれないようにするのは並の方法では無理なの!
分かってんの!?
分かってないだろ、小娘!
お前はタダでさえ目立つんだよ!
俺を巻き込むな!!
死ぬよ? お前がそのショートソード軽く振っただけで、俺サクッと死ねちゃうんだよ?
チクショー! 誰が死ぬか!
俺は生きて生きて生き抜いてやる!
あと俺はNo.0じゃねぇぇええええ!!!
怖くて言えねぇけど!!
エストリア国の内部に作られていた帝国の施設を破壊した功績とやらによって、国務大臣のこのおっさん侯爵に面会した。
そこまでは良い。
この小娘を引き取って貰わないといけないからな。
問題はそこからだ。
この小娘、俺をウラハラ国の公爵の遺児だと抜かしやがった。
だ、誰が、やんごとなき公爵様のお世継ぎ様だぁぁあああ!!!
エストリア国の大臣相手に詐欺ってんじゃねぇえよぉぉおおおおおお!!!!
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